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【特集】山に魅せられてー[Topics2]山で狩る

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三重県菰野町

山の恩恵を得て生きるのは人間だけではありません。
山で生きる野生動物たち―鹿、猪、猿。
そんな動物たちと時に対峙し、時に共存を目指す猟友会の皆さんの活動を追いました。

■近年拡大傾向にある鳥獣被害
自然あふれる山があれば切っても切り離せない課題、それが鹿や猪、猿といった野生動物との共存です。鈴鹿山脈にも多くの野生動物が生息し、鹿は杉や桧の新芽を食べて森林の生育に悪影響を及ぼし、猪や猿は時に山を下り農作物や人に被害を与える場合があります。町内でも年々、鹿、猪、猿が山の麓でも多く目撃されるようになってきており、被害を防止するには田畑に防護柵を設けなければならないなど農家を悩ませる要因になっています。

▽町内での有害鳥獣捕獲頭数の推移

■野生動物を相手にする難しさ
獣害による被害に対し、罠や猟銃による野生動物の駆除を担うのが菰野町猟友会です。会員はそれぞれの狩場で罠や猟銃を用いた狩猟を行い、有害鳥獣に対処しています。菰野町猟友会で会長を務める棚瀬賢一郎さんは、祖父と父親の影響で20歳の頃から猟師として活動し、これまで40年間、菰野町の山々で野生動物と向き合ってきました。猟銃を扱う経験から三重県代表のクレー射撃選手として国民体育大会にも5回出場したことがある棚瀬さんは現在、三重県警察の射撃講習の講師や三重県猟友会の猟銃の講師なども務めています。「猟の現場では、猟犬で追い込み狙いを定めますが、時には1時間も2時間も獲物を待つ場合もあります。野生の動物を相手に行う狩猟は本当に難しい。ただ難しい反面、引き金を引いた瞬間に大きな獣が倒れる姿は、何物にも代えがたい達成感があり、そのときどきのシチュエーションも鮮明に覚えていますね」と棚瀬さんは語ります。

■厳格な管理で処理されるジビエ
これまでは罠や猟銃で捕獲した野生動物の多くは埋却処分や焼却処分し、その肉や骨が有効利用されることはありませんでした。そのような状況に一石を投じるべく、棚瀬さんは令和6年7月、捕獲した野生動物を解体処理し、食肉として販売できる施設「TANAKEN(タナケン)サービス」をオープンさせました。主に真空パックで冷凍保存した鹿や猪の肉を取り扱い、食肉として厚生労働省が定めるHACCP(ハサップ)の基準をクリアしています。さらに解体処理施設としてはまだ8件しか認定されていない「みえジビエ」としての認定も受けています。「みえジビエ」の認定基準は厳しく、〈講習を受けた猟師が捕獲し、解体処理できるのは資格をもつ棚瀬さんのみ〉〈捕獲を確認してから1時間以内に処理場へ運搬しなければならない〉など多岐にわたり、「たくさんの申請と解体場の整備によって1年以上準備してようやく認定を受けられました。血液が最も腐りやすいため、私は徹底的に血抜きを行います。そのため、臭みがないジビエだと好評ですね」と念願のオープンに至った嬉しさから棚瀬さんは笑みを浮かべました。
「私の手によって何百頭も獣たちが処理されてきました。そう思うと命の重さに正直、想いが込み上げてくる時もあります。ですが、有害鳥獣を駆除してくれる存在として近年は猟友会に多くの感謝の言葉をいただくことも増えました。その期待に応えられるよう、これからも自然と向き合っていかなければなりません」と棚瀬さんは語りました。

▽TANAKENサービス
ジビエだけでなく、狩猟用品・射撃用品も取り扱っています。
所在地:菰野町下村1689-1
【電話】070-2622-0200
定休日:不定休

▽菰野町猟友会 会長
棚瀬(たなせ)賢一郎(けんいちろう)さん
下村

これまで鹿や猪を獲っても町内で解体処理できる施設はなく、猟師が自分で食べるくらいしか使い道がありませんでした。それでは生き物たちに申し訳ないと思い、解体処理できる施設を設けました。やるからには商品としてとことん良いものを追求したいという思いから厳しい管理基準をクリアし、「みえジビエ」としてのブランドも獲得しました。そのおかげで町内のホテルや旅館でも提供できる体制が整いつつあります。鹿や猪の部位ごとの提供やハクビシンやヌートリア、アナグマといった変わり種も提供し、無駄な部分が一切ないジビエを必要とされる方に100%届けたいと思っています。

[Column5 子ども食堂で鹿肉を提供]
子どもたちに地元で捕れた食材を味わってもらおうと、菰野の山で捕れた鹿肉を使ったカレーを振る舞う子ども食堂を町農村センターで毎月、開催しています。大人、子ども問わず参加でき、鹿肉は圧力鍋を用いて加工されているので柔らかくてクセがなく、子どもでも食べやすく仕上げられています。

・CHECK 今年最後の開催 子ども食堂
100食限定
日程:12月21日(土)11:00~14:00
会場:菰野町農村センター(菰野町潤田4418)
料金:無料 今年最後の開催は大人500円のところ、特別に大人も無料

子ども食堂 代表
伊佐(いさ)美佐子(みさこ)さん
杉谷

子ども食堂では日本中の鹿による被害などを教えつつ、捕獲された鹿の8~9割は焼却処分されている現状も子どもたちに伝えています。そんな現状を憂い、薬や不要なものを一切摂取していない自然のままの味を体感してもらいたくて、地元の山で捕れた鹿肉を提供しています。自分たちが住んでいる山の動物たちの存在を食を通じて知り、それを食べて「ごちそうさま、ありがとう」と言える子どもが大きく育ってくれればと思い、活動しています。

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