普段は眺めることしかない山頂を目指す。
たやすくはないけれど、一歩一歩が自分を山へと近づけてゆく。
そんな登山をもっと身近に感じてもらいたい。
登山イベント「THE(ザ)HIKE(ハイク)」を開催しました。
■初心者でも登山を楽しめる
最も山を身近に感じ、山の自然や山頂での景色を最大限に味わえる登山。そんな登山を経験がない方も含めて誰でも楽しめるよう企画された登山イベントが「ザ・ハイク」です。「ザ・ハイク」は、第1回を令和6年5月に菰野町御在所岳で開催し、10月26日には第2回として定住自立圏形成協定を結ぶいなべ市藤原岳で開催しました。
当日は、三重県山岳・スポーツクライミング連盟(以下、「山岳連盟」)の会員や関係者がスタッフとなり、登山のペースや危険箇所を入念に確認しながら山に入りました。参加者は登山経験の有無などから約10人ずつの班に分かれて登山を開始し、山頂を目指しました。休憩地点や見晴らしがいいポイントでは山岳連盟の会員から藤原岳の歴史や登山ルートの解説が行われ、登山の奥深さを噛みしめながら藤原岳に挑みました。山頂付近では、お弁当が提供され、360度遮るものがない景色を見渡し、秋の清々しい風を全身で感じながら山頂に生える草花や石灰石で形成された岩場を参加者たちは心地よさそうに眺めていました。
何度苦しくて
挫折しそうになっても
山頂からの景色は
全てを忘れさせてくれる。
■登山者の安全安心のために
登山は山を思う存分に楽しめる一方で遭難、けが、低体温症といった危険も伴います。山での遭難を防ぎ、登山者の安全を守るために進められている登山道整備の多くはボランティアの手によって行われています。町内の登山道には、登山ルートを示す道標が約700箇所設置されていますが、多くの地点で設置から約15年が経過し、道標の位置がずれていたり、劣化していたりする場合があります。道標は、携帯電話の電波が届きにくい山中で登山者の行き先を示す貴重な道しるべです。登山道の整備とともに鈴鹿山脈での遭難者を0に近づけ、安全に登山を楽しんでもらうためにも関係者と連携して道標の再設置や刷新を現在進めています。
一方で、登山者は一度登山をはじめれば、なかなか下山しにくいことも踏まえ、登山計画をしっかりと立て、雨具や携行食などの準備を整えて臨みましょう。そして、とにかく無理をしないこと。登山時は、自分の体力を冷静に判断し、たとえもう少しで山頂にたどりつける場所であったとしても、限界を感じれば引き返す勇気も必要になってきます。
■山への想い さらに募らせて
今回の特集で紹介した皆さんは、かたちは違えど山から受けられる恩恵を心の底から感謝して受け入れ、山との関係性を自分たちなりに築き、山とともに歩む気持ちにあふれていました。その一人一人が、山の魅力をより際立たせる大切な存在として、山の宝と思えるほどに輝いていました。この町に住む皆さんも、山の麓にある菰野町に住んでいるのですから、町内どこからでも見える鈴鹿山脈の雄大な姿を眺め、その魅力をふとしたときに思い出し、山へ想いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと同じように山に魅せられるはずです。
▽「THE HIKE」参加者の声
・水谷(みずたに)真理(まり)さん 朝日町
こんなに体力的に大変だったのは学校の部活動以来でしたが、頂上で景色を眺めながら昼食を食べてその疲れも吹き飛びました。付き添ってくれるスタッフが適切なタイミングで声をかけてくれたことがすごく励みになり、登山初心者の私でも登りきることができました。
・奥(おく)貴光(たかみつ)さん 四日市市
当日は暑くも寒くもなく、穏やかな天気の中の登山で心地よかったです。妻に誘われて参加したので朝の登り始めは気持ちがおっくうでしたが、登り始めたら何も考えることなく登ることができ、ところどころ見える絶景に心奪われて楽しくなっている自分がいました。
・水谷(みずたに)みちるさん 菰野町
セブンマウンテンは以前から登ってみたいと思っていて、このイベントを逃したら次の機会はないと思って参加しました。このようなイベントは大変ありがたいです。登山には体力が必要と思って、当日までに1200段の階段を登ってトレーニングを重ねて臨みました。
[Column6 安全な登山に繋がる登山道整備]
菰野町朝明を拠点に、鈴鹿山脈を中心に活動している朝明アルパインクラブでは、町内の登山道の整備を行っています。登山道の整備には、景観を損なわないよう、山にある自然の素材を用い、整備後も維持が図れるよう常に意識しながら整備を行っています。登山者が安全に登山を楽しめるのは、このような地道な活動のおかげでもあります。
朝明アルパインクラブ
居村(いむら)年男(としお)さん
約40年間、鈴鹿山脈の登山道整備に携わっています。使用する木材や石材は現地調達で、橋を架けるにも細かい設計図はなく永年の経験を頼りに作ります。ただ、我々の手では1年に1本の登山道を整備するのが手一杯で、整備後に人が通って1年で崩れては意味がなく危険なので、ある程度の年数を維持できるよう整備をしています。ルートを示す道標と登山道がしっかり整備してあれば、山中での遭難者は必ず0に近づきます。
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