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鳥羽・海藻文化革命 岩尾博士の海藻博物記 vol.34

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三重県鳥羽市

~アマモ場の消失について~

干潟の生態系に重要な役割をはたすアマモは「鳥羽市 海のレッドデータブック2023」に絶滅危惧II類として掲載されている。伊勢湾沿岸ではこの70~80年で90%以上が消失してしまい、松阪市の松名瀬海岸には大群落が残っているが、ほかは鳥羽市に少し残されている程度で、志摩市のリアス海岸にいくつか残っていた群落もほとんど失われてしまった。鳥羽市周辺ではイルカ島西岸砂浜に一年生群落、二見町松下、答志島桃取町沖の浮島南岸や答志島南岸西寄りの砂浜、浦村町の小白浜や麻生の浦大橋奥の干潟には多年生群落がある。以前はこのほかにも坂手島南西岸に多年生群落があったが、10年程前に完全に消失してしまった。おそらく加茂川流域の護岸工事などによる海底や水質環境の不安定化が影響しているのだろう。安楽島漁港近くの砂浜にも多年生群落があったが、黒潮大蛇行の影響か、ほとんど消失してしまった。そして、昨年春ごろから前述の浦村小白浜の群落は激減し、大橋奥の干潟からも姿を消してしまった。魚の摂食痕も多くみられた。現在、海の博物館を含むいくつかの組織はアマモ場を保全、回復させる試みを行っているが、時間がかかるだろう。
いつもの沿岸環境もふとした自然の変化や人間活動の影響で激変することは普通に起こる。レッドデータブックをどう使うのかと、よく質問を受けるが、これを片手に観光客に自然案内をするというのではなく、例えば保全活動をするときにより効果的な時期や場所、規模や生態系への影響を考えたり、将来沿岸に何かを作るときに、可能ならば、生物多様性に配慮するためにレッドデータブックを作っている地域(専門家だけでなく地域のみなさんの知見も大きく参考にしている)の意志を都市・観光計画に盛り込むべく使ったりしてはどうかと考えている。

問合せ:水産研究所
【電話】25-3316

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