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中村欣一郎市長の山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でも… Vol.79

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三重県鳥羽市

■久しぶりの被災地

お城を中心に発展したまちを城下町、一方で有力な寺院や神社の門前に形成されたまちを門前町と習った憶えがあります。7月に炊き出しへ向かった輪島市門前町はまさに文字通り、曹洞宗大本山總持寺の門前を由来とするまちです。
これまでにも、大きな災害があるとボランティアや視察として可能なかぎり駆けつけてきましたが、今回の能登半島地震のように約半年も現地へ入れなかったことはなく大変もどかしく感じていました。わずかな時間見てまわっただけで何がわかる、と言われかねませんが、いつか起こるであろう、南海トラフ地震や大雨、土砂災害の参考になればとの一心で現場の空気を吸っています。
さて、今回の炊き出しでは、避難所向けに約40人分の昼食の依頼があり、鳥羽市からの有志総勢11人で、企業十数社から提供を受けた食材を託されて、輪島へ行きました。私に任されたのは、ドラム缶窯を持ち込んでのピザ焼きで、これまでイベントなどで1000枚以上焼いてきた私の定番です。
こんな暑い時に薪を焚べて迷惑がられないかと心配もしましたが、半年たって少し遊びゴコロのあるものも喜んでもらえるのでは、という提案で私の出番となりました。
配膳テーブルにメニューを貼り出していましたが、「鳥羽市長特製メニュー ピザ」という掲示に「何コレッ」と聞かれるので、「私が焼きます。私市長です」と答えると、とても驚かれました。
また、遠く離れた鳥羽から支援に来たことを涙ながらに感謝され、こちらも胸がいっぱいになりました。そして、「ピザなんて食べるの久しぶりよ」と語る女性の姿に、29年前のことを思い出しました。
それは、阪神淡路大震災で初めて炊き出しに行った時のことです。神戸市東灘区の小学校、発災1ヶ月後のことでした。私のボランティア元年です。その時は伊勢うどんを提供したのですが、私から器を受け取った女性は、うどんに鼻を近づけ、空を向いてしみじみと言いました。「久しぶり。ああ、おネギのいい香り」と。薬味のネギにこんな感想を言ってもらえるとは、忘れられないシーンです。
能登の復興はこれから時間がかかることが想定されます。このお二人の女性のエピソードから、特に食べることに限りませんが、その時々に応じた支援をしたいとあらためて思いました。

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