~海のレッドデータブック~
ノコギリモクはヒジキと同じホンダワラ科の海藻であり、その特徴は大きな円錐形の根っこ、縁がトゲトゲしてやや平たくなった主枝、縁がギザギザした葉(特に下部についている大きな葉)の3点である。ヨレモクやヨレモクモドキという海藻にもよく似ているので、ちぎれて流れ着いた先端部だけを持ち込んで、「これは何ですか?」と尋ねられてもノコギリモクかヨレモクかヨレモクモドキですと答えることになる。この海藻は三重県では志摩市以南では普通に見かける海藻であり、砂浜などに打ち上げられていることも多い。私が学生時代、今から20年程前はそうであった。大型海藻がなくなってしまう「磯焼け現象」が志摩市以南において常態化してしまった現在はそれほど見られなくなってしまったのかもしれない。鳥羽で働くようになり、当然鳥羽にもたくさん生えているものと思っていたがそうではなかった。答志島や神島、菅島に石鏡や国崎、相差に潜っても見かけることがなく、つい昨春、畔蛸の磯でしっかりとした群落をやっと発見することができた。
ここ数年、鳥羽でも畔蛸や相差などで磯焼けが認められるようになり、サガラメ(あらめ)やカジメの群落がなくなってしまった場所もある。しかし、その畔蛸の海でノコギリモク群落を見つけられたことはとてもうれしかった。生長の速いノコギリモクの群落の中にサガラメの赤ちゃんが生え、そこのワサワサした林で魚の食害から免れ、大きく育つこともあるかもしれない。少し短絡的な夢想だが、まだ鳥羽には多様な海藻があり、その一つとして新しく見つけたということが喜ばしかった話。多様な生物種がいることはとても大切なことだ。
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