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三重大学海女研究センターだより vol.15

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三重県鳥羽市

今回は石垣島からコラムをお届けします。
私は今、3月から4月の収穫に向けた種付けや芽出しに向けた作業が進むモズク養殖の現場にお邪魔しています。モズクは沖縄県にとって、なくてはならない養殖対象種で、県の漁業生産量の約半分を占めています。私たちの食卓に並ぶ「沖縄産モズク」は、この島々での努力と自然の恵みから生まれています。
しかし、近年の海の温暖化が、この伝統的かつ重要な産業に大きな課題を突きつけています。海水温の上昇は、モズクの生育不良の原因となり収穫量が減少するだけでなく、養殖の各工程にも影響を与えます。そのため、温暖化に対応できる新しいモズクの品種開発に取り組んでおり、高温環境でも成長できる種の選抜や交雑育種の取り組みが進んでいます。このような研究が成果を挙げれば、安定したモズクの生産が可能になると期待されています。
また、モズクの養殖現場ではICTを活用した取り組みも進んでいます。特に、海水温などのモニタリングを強化し、沿岸域の水質データを収集する仕組みが整備されつつあります。これにより、養殖海域の水温の早期把握が可能となり、養殖の各工程をデータに基づいて実施することが可能となります。スマート化に向けた動きが徐々に進んでいます。
一方、モズク養殖は環境保全の面でも期待されています。ブルーカーボン効果を有し、二酸化炭素の吸収源としての役割を持っており、持続的なモズク養殖が気候変動対策の一端を担うのではないか、と考えられています。このことに関して調査や研究が進んでいますが、モズク養殖は単なる食糧生産の手段にとどまらず、地球規模の課題解決にもつながる重要な産業へと進化する可能性があります。
日本全国のスーパーで気軽に購入できる沖縄産モズクは、沖縄の豊かな自然と、養殖を支える人々の努力で作られたものです。少し離れた沖縄の海と持続可能な養殖業について考えるきっかけとなれば幸いです。
鳥羽市においてもブルーカーボン効果を有するクロノリやワカメなどの養殖生産が行われていますが、海域環境の変化によって生産が安定せず、生産者のかたは苦労されていることと思います。この地域でも環境の変化に適応した持続的な養殖生産を実現できるよう、海藻類の養殖へのICT導入の研究開発を進めていきたいと思います。
(准教授 岡辺拓巳(おかべたくみ))

問合せ:三重大学海女研究センター(三重大学人文学部総務担当)
【電話】059-231-9195

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