■編(あ)んだり、食(は)んだり。季節の草花と暮らす、営む―
老籾千央(おいもみちひろ)さん
峰山町で自家栽培のお米と卵を使った菓子店「Amu-Hum(あむはむ)」を営む老籾千央さん。6年前に大阪からUターンし、実家の田畑を継ぐために農業を学ぶべく弥栄町にある農場へ就職。多様性を尊重する有機農業の考え方に共感し、農薬や化学肥料を使わずにご夫婦でお米を育てています。「屑米(くずごめ)を捨てるのがもったいなくて鶏を飼い始めて。すると卵がたくさん採れて食べきれず、お裾分けするような気持ちでお菓子に加工して販売しています」と話します。そんな老籾さんの農業への関心の原点は、小学生時代に〝京丹後長岡緑の少年団〝で経験した植樹や間伐(かんばつ)体験だったそう。
「一次産業へ興味を持ち、林業を学ぶために地元を離れて高校、大学と森林科学を学びました。大阪で林業経営に携わる会社へ就職して各地の林業地域を訪れる中で、全国には田んぼが1枚もない山村もあることを知って。唯一得られる森林資源の〝付加価値〝を高めて、お金を稼ぎ暮らしてきた山村の知恵の数々に衝撃を受けました。京丹後を〝何もない田舎〝と思っていた10代の自分の視野の狭さを痛感して、地域の資源を生かして生業(なりわい)を作る人になりたいとUターンを決意しました」と振り返ります。今の老籾さんの目標は、このお店が〝農家と非農家の中継地のような場所〝になっていくことだそう。「真夏の畦(あぜ)草刈りを体験したことがあれば、早朝から草刈機の大きなエンジン音が聴こえても、応援する気持ちが芽生えることもあると思うんです。作り手の見ている景色を共有したり、一緒に楽しんでもらえるお店になっていくことが今後の目標の一つです」と語ってくれました。
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