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自治体の皆さまへ

《特集》未来への扉を開ける!大学×地域で動く多彩なプロジェクト(2)

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京都府京田辺市

■まちの課題解決に向けて大学のチカラを
市は、地域課題の解決・地域資源の掘り起こしにつなげるために、幅広い大学の研究者に委託研究を行う「市大学連携地域貢献研究事業」を行っています。今年度、研究に取り組んでいる皆さんに話を伺いました。

◆〔研究テーマ〕遊休農地を使用した市民参加型の自然栽培農法の実践
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 細胞工学研究室 准教授 武田征士さん(47)
社会人マンドリン団体に所属するほか、ハンドボールやトレイルで汗を流しています。

◇研究内容は
普賢寺地域の遊休農地を利用して、農薬・肥料を使わない自然栽培を研究しています。普賢寺ふれあいの駅や農家組合の皆さんの協力を得ながら、市民参加型で進めています。昨年は、約30人の市民の皆さんと一緒に、ダイコン・カブ・枝豆などの栽培・収穫を行いました。土いじりに興味のある市民の皆さんと、増加する遊休農地を結びつけることで、農地の有効利用と参加者同士の交流が図られればと考えています。

◇自然栽培の魅力は
農薬は人体や周囲の環境に影響を与えるだけでなく、益虫を殺してしまうことがあります。また、肥料は植物の成長を促す効果がありますが、味が水っぽくなったり、虫が寄り付きやすくなったりする弊害もあります。肥料の使用を止めることで、味が濃くなり、植物本来の味・姿が楽しめます。植物も人間と同じで、ある程度ストレスを与える方が、活力を引き出せるようです。

◇今後のビジョンは
品種改良を行った交配種(F1種)は、厳しい自然環境には弱いといわれています。一方、伝統野菜などの在来種は強じんでたくましいことから、自然栽培に適していると考えています。今秋からさまざまな在来種を試験的に栽培し、その中から、京田辺市の気候・土壌に合った品種を参加者の皆さんと一緒に探っていきたいです。

◆〔研究テーマ〕同志社大学におけるアントレプレナーシップ教育に京田辺市の地域課題解決を埋め込むための教育方法および教材の開発
同志社大学 商学部教授 太田原準さん(52)
アメリカンフットボールの朝練に通う息子のために、高校入学に合わせて本市に移住しました。

◇研究内容は
京田辺市の地域課題を取りまとめた「市研究ニーズバンク」。同バンクにストックされている多種多様なまちの課題を解決するためには、アントレプレナーシップ(※1)教育が重要だと考えています。そのために、解決策を提案する既存の取り組み「同志社ローム記念館プロジェクト(※2)」を見直すことを議論しています。現行の一年間という短い期間ではなく、長期的・恒常的なプロジェクトに昇華させるとともに、提案だけでなく実現に向けて取り組めるような実践的なものに再構築できないかなどを研究しています。

◇大学の特色は
同志社大学は、文系の今出川・理系の京田辺とキャンパスが分かれています。専門分野が異なるそれぞれのキャンパスの学生を巻き込んで、アントレプレナーシップ教育を実習に取り入れることで、市の課題解決に向けて実行できる学生が育つことが期待されます。
また、同志社大学を創立した新島襄は、アントレプレナーシップの体現者であり、本大学にはその精神が根付いていると思います。実際、卒業生には社会で活躍するたくさんの経営者がいます。そのため、学生が経営者と接する機会に恵まれるなど、アントレプレナーシップを育む土壌や環境が十分に備わっていると思います。

◇今後のビジョンは
アントレプレナーシップは、企業家だけでなく、さまざまな業界で求められる能力です。また、10人いれば10通りの解釈があるので、単純に教えられるものでもありません。アントレプレナーシップ教育をうまく取り入れ、ゼロから解決策を導き出し、挑戦できる人材を育成できればと考えています。

(※1)アントレプレナーシップゼロから事業を生み出す高い創造意欲を持ち、リスクに対しても積極的に立ち向かう精神・姿勢のこと。
(※2)同志社ローム記念館プロジェクト学生が企業・地域などと連携して、IT・情報メディアに関連したさまざまなプロジェクトを展開しています。

◆〔研究テーマ〕若中年層を対象とした骨格筋レジスタンストレーニングによる生活習慣病発症抑制効果の検討
同志社大学 スポーツ健康科学部 教授 北條達也さん(61)
低酸素環境の体験実習で学生たちと登山することが楽しみ。下山後の温泉は格別です。

◇研究内容は
生活習慣病などのリスクが高い人に、継続的な運動習慣を身に付けてもらうことで、発症予防につなげる研究を行っています。
具体的には、市内の総合病院で人間ドックを受診された人の中で、生活習慣病のリスクが高いと診断された若中年層を対象に、家や職場などで手軽に筋力トレーニングができる方法を示した動画を提供します。そして、動画を見ながら継続して運動に取り組んでもらい、次回の人間ドックの数値と比較して身体への影響を分析します。トレーニングの有効性を具体的に示すことで、運動に対する意欲を高めてもらい、長期的・習慣的にトレーニングに取り組んでもらえればと考えています。

◇運動してもらうための工夫は
これまで運動習慣がなかった人に、トレーニングを継続的に行ってもらうことは非常に難しいです。あまり負担を感じさせず、どこでも手軽に取り組んでもらえるように、トレーニング内容は、器具を使わず自らの体重の負荷を利用したものとしています。また、トレーニングのデモンストレーション(実演)を行うモデルを毎月変えるなど、飽きさせない工夫も考えています。

◇今後のビジョンは
研究の成果が立証できれば、トレーニング動画を対象者だけでなく、市民の皆さんへも広く公開することを考えています。市民一人ひとりの健康への意識を変えることで、病気の予防につなげ、いつまでもいきいきと過ごす人々であふれるまちになればうれしいです。

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