■紫式部市民文化賞
市民による作品で、新作または前年度に刊行された文学作品および研究作品で、応募のあった30作品の中から選ばれました。
◆紫式部市民文化賞
「雲に棲む ー槇島昭光伝ー」
松村 信二(まつむら しんじ)さんの小説
▽受賞の言葉
十代の終わりの秋、『宇治市史』によって本作の主人公槇島昭光の存在を知りました。槇島城跡に佇みながら、いつの日にかこの無名の戦国人のことを書きたいと念じていました。
三十年後、地元の洛南タイムズに連載をさせて貰い、終了後本にしましたが、まだ書き足りない何事かを感じ、発表のあてのない続編を書き綴って来ました。本で取り上げることの少なかった昭光の後半生に焦点を当てて。作品は陽の目を見なくてもいい、彼の生きた証しを残したいとの思いでいたのですが、今回思いも寄らない賞を頂き、嬉しく、嬉しく。六十代後半の今、五十年前の秋風と違った感慨に浸っています。
あの頃の想いを表現し得た喜びと同時に、自分は昭光に礼を尽くすことが出来たのであろうかという怖れを。
・著者略歴
昭和32年生まれ。府立城南高校卒業。平成13年に「文芸社」より『流離の蘭』出版。平成18年に「すばる出版」より『槇島昭光』出版
◆紫式部市民文化賞
「ドイツアルプスのリュフトル画(が)」
宮崎 周子(みやざき しゅうこ)さん・宮崎 健創(みやざき けんぞう)さんの研究
▽受賞の言葉
このたび、紫式部市民文化賞を授与いただき大変光栄に思います。
ドイツ南部のアルプス地域を訪れると、多くの建物に色鮮やかな絵が描かれているのに気づきます。Lüftlmalerei(リュフトル画)と呼ばれている外壁画で、窓や戸口周りの装飾模様をはじめ、聖母マリアやキリスト像、カトリックの聖人、聖書の場面、伝統的な生活風景などが題材になっています。画は18世紀中頃に描かれ始め、地域に特有の芸術文化として継承されてきています。
初めてこの画に出会ったのは、40年以上も前にミュンヘンに住んでいた時でした。日本では見ないこの異文化に強く惹かれ、調査や資料収集を繰り返してきました。
本書では、リュフトル画の歴史、題材、主な絵師や技法を概説すると共に、アルペン街道沿いの集落を西から東へ辿りながら、古い作品を中心に紹介しています。本書がこの絵画文化に興味を持ってもらえるきっかけになれば嬉しい限りです。
・著者略歴
周子さん…昭和26年北海道苫小牧市生まれ。光華女子短期大学卒業後、大阪医科大学庶務課勤務。平成23年に『オーバーバイエルンのリュフトル画』の訳本制作。
健創さん…昭和23年兵庫県多可郡生まれ。京都大学大学院工学研究科博士課程修了。通商産業省工技院で研究員等として勤務後、京都大学エネルギー理工学研究所教授。定年退職後、同大学名誉教授。
◆紫式部市民文化賞 奨励賞
「宇治歴史ひとりあるき」
飯島 栄子(いいじま えいこ)さんの随筆
・著者略歴
昭和22年生まれ。大学卒業後、商社アパレル部門や専門学校(講師)に勤務。平成23年宇治市へ転居。宇治鳳凰大学在学中。
◆紫式部市民文化賞 ユース賞
「春のみなとは知らねどもー女陰陽師(おんなおんみょうじ)と鬼女(おにおんな)の散逸譚(さんいつたん)ー」
小野田 磨柚(おのだ まゆ)さんの小説
・著者略歴
平成6年生まれ。京都教育大学大学院教科教育専攻修了後、現在、井手町立中学校勤務。
各作品の講評等はこちら
※二次元コードは本紙参照
◇贈呈式・講演会の参加者募集
日時:11月23日(土・祝)午後1時半~4時(開場は午後1時)
場所:文化会館大ホール
定員:抽選で1300人
講師・内容:東 雅夫さん(文芸評論家)、「『風配図』に至る皆川作品の多様な魅力をめぐる」
申込み:「贈呈式入場希望」・氏名(ふりがな)・郵便番号・住所・電話番号を、郵送・Eメールで文化スポーツ課(〒611-8501 宇治琵琶33【E-mail】bunkasportska@city.uji.kyoto.jp)へ。重複応募不可。
問合せ:文化スポーツ課
【電話】20-8724
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