万葉集にも詠まれた「巨椋の入江」(巨椋池)のほとりでは、古くから優良な茶園が広がり、歴史的遺産である巨椋神社や古い街並みも残されています。
長い年月で培われた豊かな文化をもつ小倉に、今秋「ニンテンドーミュージアム」がオープンしました。新たなスポットとして期待が高まる小倉の「古くて新しい」魅力の一部を紹介します。
小倉エリアと中宇治エリアを結ぶバスの実証運行も始まり、宇治探索はより便利になっています。
あなたも小倉から宇治探索を始めてみませんか。
■小倉エリア~中宇治エリアの探索がより便利に!
詳しくは6・7ページに掲載
・探索に便利なバス
小倉エリアと中宇治エリアを結ぶバス
・探索に便利なマップ
小倉エリアと中宇治エリアの飲食店等が載っている便利なマップ
■OGURA 探索スポット1
(歴史を感じる)千年以上の歴史をもつ巨椋(おぐら)神社
◇地元の人々に親しまれている「巨椋神社」
近鉄京都線小倉駅北東、大和街道沿いにある「巨椋神社」は、古代、巨椋池のほとりに巨椋氏という豪族が住んでいたことから、その祖神を祀ったのが始まりとされ、長い歴史をもつ由緒ある神社です。藤原氏の勢力拡大などに伴って名称や祭神が変わり、現在は春日大社と同じ春日四神が祀られています。
同境内には、子どもの守り神として、「子守(こもり)神社」も祀られており、文徳天皇皇子・惟喬(これたか)親王が、子どもに危害を加えていた三羽の大鷲を退治したという伝承があります。
毎年10月1日~10日には秋祭があり、子ども神輿の巡行も行われ、地元の人々に親しまれています。
◆玉露発祥の地 小倉
巨椋神社の隣にある小倉公民館の前に「玉露製茶発祥之碑」があります。
・碑に記されている内容
玉露は天保6年(1835年)、山本嘉兵衛が小倉の木下吉左衛門の製茶場で試作し江戸に持ち帰って「玉の露」との名で諸侯伯に贈り、賞賛を得たことに始まる。その後、江口茂十郎が苦心の末にこれを完成し「玉露」として売り出したら喫茶家の嗜好に適し、その需要が全国に広まった。特に小倉産の玉露は香味優秀であり、先人の遺徳を偲び、碑を立てて後世に伝える。
■OGURA 探索スポット2
(お茶栽培の伝統を感じる)玉露発祥の地で伝統技術を継承 丸利 吉田銘茶園
17代目園主吉田 利平(よしだ りへい)さんにお話を伺いました。
◇伝統技術で玉露を生産
宇治で生産されるのは、主にてん茶(抹茶の原料)と玉露です。新芽のうちに茶園に覆いをし、日光を遮り育てる覆下栽培(おおいしたさいばい)を行っています。吉田銘茶園では、400年以上前からの伝統技術「本(ほん)ず覆下栽培(おおいしたさいばい)」で玉露を生産しています。
◇茶園が日本遺産に
本ず覆下(おおいした)栽培は、室町時代から行われてきた方法です。茶園に丸太で杭を打ち、竹を使ってやぐらを組んで棚を作ります。そして、その棚の上に琵琶湖のヨシで編んだすだれ状の「葦簀(よしず)」を広げ、「藁(わら)」をふきます。化学繊維を使わずに自然素材で遮光することで、茶園の中の温度が上がりにくくなり、新芽がじっくりと成長します。茶葉に鮮やかな緑色、甘みとうま味、豊かな香りが生まれます。弊園の小倉町寺内にある本ず茶園は、日本遺産に認定されています。
また、伝統的な手摘み、手もみによる製茶法を行い、日本最古とされている高山寺茶園(栂尾山(京都市右京区))の管理を行うなど、宇治茶の伝統と文化を今に伝えています。
◇急須で淹れたお茶は心を潤す
最近は、ペットボトルのお茶を飲むことが多いのではないでしょうか。ご家庭でおいしい玉露を楽しむコツは、茶葉を惜しまず急須に多めに入れること。人肌程度のお湯をひたひたに入れ、温めておいた器に注ぎます。玉露はコーヒーや紅茶と違い、一回で3〜4煎飲めるので、一煎目、二煎目…と温度を上げることで、香りや味わいの変化を楽しむことができます。
「のどを潤すのはペットボトルでも良いが、急須で淹れたお茶は心を潤してくれる」と思っています。皆さんも、宇治茶でほっと安らぐ時間を持ちませんか。
■OGURA 探索スポット3
(お茶を体験する)見る香る 五感で楽しむお茶広場 TEA SQUARE MORIHAN
スタッフの中林 彩子(なかばやし あやこ)さんにお話を伺いました。
◇お茶どころとしての小倉
「森半」(共栄製茶(株))は、1836年(天保7年)に「森半製茶所」を創業してから188年間、宇治小倉でお茶の販売をしています。急須を使ってお茶を飲む人が減っていく中、もっとお茶を楽しみ感じていただける施設を作りたいという想いから「TEA SQUARE MORIHAN」を令和5年6月に、創業の地でグランドオープンしました。
この施設が立つのは、かつて上質な宇治茶を京都に運んだ大和街道沿いで、昔からお茶の生産が行われ、茶問屋も残る地域です。お茶どころとしての小倉を知っていただき、新たなお茶の魅力を発見し、より身近に感じていただきたいです。
◇築百年の蔵をリノベーション
入口付近では、2基の石臼が自動で抹茶を挽く様子を観察できます。1時間で挽けるのはわずか30グラム(お薄 約15杯分)。時間をかけて挽くことで、風味とうま味を引き出すことができます。
創業時から使われてきた蔵をリノベーションした「蔵カフェ」では、「丸利 吉田銘茶園」が手掛けた高級な手摘み抹茶ラテや、施設内の工場で製造した抹茶やほうじ茶、スイーツを味わうことができます。
◇お茶を五感で楽しむ施設
施設の中庭にはお茶の木を植え、「KAORIUM」というスペースでは新茶のハーバリウムを展示しており、お茶の葉を、間近に見て楽しめます。中庭から臨む「拝見場(はいけんば)」では、お茶の品質等を見極めるための審査を行う様子を、ガラス越しに見ることができます。
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