[CASE.2]株式会社エネコートテクノロジーズ
◆どこでも発電し、電力を供給する太陽電池を発明
▽同級生に誘われて
自身の研究テーマ探索の過程で「ペロブスカイト太陽電池」に出会った現京都大学教授の若宮先生に、事業化の相談をされ、「人類・社会に貢献出来る研究にも取り組みたい」という思いで起業しました。当時、会社員でしたが、技術力の凄さや実用化の可能性に心が動きました。
大学発スタートアップとして、京都大学の教授が同級生である私とともに大学の支援を受けながら創業しましたが、入居した宇治ベンチャー企業育成工場は当初から支援体制が手厚く、環境としてやり易かったです。
▽「どこでも電源(R)」の誕生
「ペロブスカイト太陽電池」は2010年代に登場した、歴史が新しく、主成分を国産でまかなえる太陽電池です。重く・太陽光にしか反応しない現行のソーラーパネルに対して、薄い・軽い・室内光にも反応し、発電性能が高い点が強みです。これらの特性を生かし、設置場所を選ばず、どこでも発電・供給出来ることから「どこでも電源(R)」と名付けました。
▽身の回りから宇宙まで
リモコンや時計に「どこでも電源(R)」を使うと電池交換が不要になる等、日常生活が便利になって欲しいと願っています。そのためにまずは量産出来る体制づくりに取り組んでいます。
また、トヨタ自動車株式会社と共同で車載電源の開発や、JAXAと共同で宇宙用途に取り組む等、様々なシーンでの活用を目指しています。
「どこでも電源(R)」のように世の中にないモノを生み出すことに楽しさや、世の中に与えるインパクトを思うとやりがいを感じています。
代表取締役 加藤 尚哉(かとう なおや)さん
▽ものづくりの現場を見て
前職から転職を検討している時に今の会社に出会い入社しました。
ペロブスカイト太陽電池は初期の研究から関わっています。当初は周りの人に話しても「何それ?」と言われるばかりでしたが、国に注目され、知っている人が増えてきたことに嬉しさを感じています。現場の職員から「変換効率(※)の数字が上がってきたこと」等、日々成長していることを実感し、勢いやダイナミックさを目の当たりに出来る環境にやりがいを感じています。
管理部 奥山 達徳(おくやま たつのり)さん
(※)変換効率…100の光を取り込み、電気に変換できる割合。エネコートテクノロジーズでは約24%を達成しており、他社に比べて高効率を実現している。
[DATA]
株式会社エネコートテクノロジーズ
事業内容:ぺロブスカイト太陽電池の材料・モジュールの開発・製造
創業:2018年
[CASE.3]メトロウェザー株式会社
◆風を見える化し、世界の安全を守る
▽起業のきっかけ
局地的な強風の影響で電車がよく止まる状況を解決するため、風況を把握しようという思いで研究を開始しました。当初、外国の製品を借りて計測していましたが、測定出来る範囲が狭く、「だったら自分たちで開発しよう」と起業。当時は、日本のスタートアップの創出期で、自分で勉強しながら創りあげました。
▽ドップラー・ライダーで大気を測る
ドップラー効果と言って、遠ざかる光源からの光は波長が伸び、赤く変化します。逆に、近づく光源からの光は波長が縮み、青く変化します。私たちはこの原理を応用し、空気中の細かな塵にレーザー光を照射し、その反射光を受信する際の光の偏移を解析することで、最大半径15km圏内の風向き・風速を測定出来る製品「ドップラー・ライダー」を研究開発しています。私たちの製品は、ノイズを取り除き、綺麗に信号を取り出す独自の信号処理技術により、弱いレーザーでも測定出来、製品の小型化・低コスト化を実現しています。
▽宇治からイノベーションを起こし、世の中を変える
現在、当社の持つ技術を活用してドローンの位置を把握する物体検知など、さらなる研究開発に挑戦しています。
また、お客様の要望に応え、支持してもらうことと、ビジネスのバランスを大事にしています。既存製品を改良するのではなく、1から新しいモノを生み出し、イノベーションを起こして規格化し、世の中を変えるビジネスで次の30年、50年を支える産業を宇治で目指しています。
代表取締役 古本 淳一(ふるもと じゅんいち)さん
▽精度が求められる仕事
精密機器を扱っているため、ひとつ一つの工程に細やかさを要し、苦労する反面、興味が湧きます。また、収集したデータを分析するソフトウェアも、相手のニーズに合わせて調整し、望ましい方法でデータを提供することを大切にしています。
▽ドップラー・ライダーの活用
昨年、国際ヨットレース会場で、ドップラー・ライダーを活用した世界初のリアルタイム風況観測データ配信をしました。当社としてもスポーツシーンでの初めての取り組みでしたが、選手やチームに加えて大会運営側からの高いニーズと今後の期待の大きさに驚きました。
現在、他にも、このリアルタイム風況可視化による、風力発電の効率化や船舶の最適航路を導くことによるCo2削減や燃費削減を目指しています。また、物体検知などの研究開発から繋がる新たな分野も含めて、ドップラー・ライダー技術の革新に挑戦し、世界の安心・安全を目指していきます。
技術開発本部 VPoE 兼 技術開発本部長 アルタン・チャージャンさん
[DATA]
メトロウェザー株式会社
事業内容:リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売
創業:2015年
※詳しくは本紙またはPDF版をご覧ください。
問合せ:産業振興課
【電話】39-9621
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