■宝珠台(ほうじゅだい) 海住山寺(加茂町例幣)
内側を刳り込んだ数枚の木板を張り合わせて外形を山形とし、表面に白土(はくど)下地を施した上で彩絵を加えた宝珠台です。山形の山頂部には宝珠を安置するためのくぼみがあり、同寺伝来の水晶製能作性(のうさしょう)宝珠(阿闍梨(あじゃり)が作製した宝珠)が安置された可能性が指摘されています。一面には聖徳太子の勝鬘経(しょうまんぎょう)講賛の場面が表され、もう一面には石清水(いわしみず)八幡宮の境内を描いています。別造りの基台は木製黒漆塗で、全面に銀蒔絵(まきえ)で流水文様を表現し、右下には橋が描かれていて、木津川ないし放生(ほうじょう)川を表すものとみられ、全体で山頂に宝珠を頂く霊山としての男山と、石清水八幡宮を表現していると推定されています。石清水八幡宮と聖徳太子はともに宝珠信仰との結びつきが想定でき、それは西大寺叡尊(えいぞん)の行った宝珠法との関連が考えられます。海住山寺と叡尊も少なからぬ関わりを有していたことが知られています。鎌倉時代から南北朝時代頃、14世紀の作とみられ、中世南都の特色ある宝珠信仰を示す類例の少ない遺品として貴重であることから、京都府指定文化財に指定されています。令和5年度に2か年にわたる修理が完了し、秋の特別公開にて、12月1日(日)まで海住山寺で公開されます。
問合せ:文化財保護課
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