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善聞語録161

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京都府綾部市

■情けは人のためならず
表題の意味については二通りの説がある。「人に情けをかけて助けてやることは、結局はその人のためにならない」という解釈と、「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」という採り方。正しいのは後者だが、両説は真逆の解釈であるため要注意。とはいえ、報いを期待して他者に善行を施すというのもいかがなものであり、「わらしべ長者」でもあるまいし、報いがあったとしても結果論といえよう。
先日、故中村哲医師を現地で長年にわたって支えた看護師、藤田千代子さんの講演を聴く機会があった。故人はアフガニスタンで医療や開拓など人道支援に貢献。水があれば多くの病気や貧困、難民問題を解決できるとして、医師ながら各所に井戸を掘り、総延長25キロに及ぶ用水路を完成させ農地を拓(ひら)いたことは有名。3年前に武装勢力の銃撃をうけ志半ばで亡くなった。
数多くの名言を残しているが、その中で「我々はアフガニスタンに与えているばかりではない。実は人間として何が本当に大切なものかを、彼らから教えてもらっている」との一節は印象深い。己の人生の大半を飢餓と紛争の異国で過ごし、その地に自らの命まで捧げることになる男が、現地から授かった「本当に大切なもの」とは何であったのか―。
それは、人間の生きていく術として食べることの重要性や大自然への畏怖、普遍的な母性愛、それぞれの民族の伝統・文化への崇敬、真の平和の意味…などになろうか。故人が表題の意味を意識していたか知る由もないが、あの世では現世の功徳が報われ、先に病没した愛息と癒(いや)しの時を過ごす〝情け〞に浴していることを祈るばかりだ。改めて合掌しつつ、不肖私も同窓(九州大学)の端くれとして、〝情け〞に拘(こだわ)った人生を歩んでいきたいという思いを募らせている。

山崎善也(綾部市長)

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