■賢く縮む
我が国の人口減少が著しい。2004年をピーク(1億2784万人)に、国の予測では2050年には1億人を割り、2100年には5千万人を切る勢いで減少するという。まさにジェットコースターのような急降下で明治維新時の3千万人台に近づいていく。100年後には150年前に逆戻りするだけとの見方もできようが、維新時の高齢化率は4%で、これから迎える高齢化率40%の時代とは年齢構成が大きく異なる。労働力不足や社会保障が懸念される所以(ゆえん)である。この予測は精緻な天気予報よりも当たるといわれ、まっとうな為政者ならこの〝不都合な真実〞から眼を逸(そ)らすことなく国づくりやまちづくりに勤(いそし)むしかない。
ただしこの現象は日本だけでなく、中国や韓国、台湾など東アジア共通の課題であり、短期間に急速に発展して世界を驚かせてきた「東アジアの奇跡」の反動が起きているともいえる。対策に妙案はないが、子育て支援や定住促進に努めて人口減少のスピードを鈍らせる「緩和策」と、人口減少社会にあっても医療や福祉、公共交通など基本的な住民サービスを持続する「適応策」を組み合わせることで、いわゆる〝賢く縮む〞ことが肝要と考える。本市は昨年、人口戦略会議が発表する消滅可能性自治体リストから外れたが、一喜一憂することなく、この2つの施策を車の両輪として進めていきたい。
劇作家平田オリザ氏は著書の中で、この国の新しい形を「下り坂をそろそろと下っていく」と表現している。司馬遼太郎著『坂の上の雲』を逆説的に引用したものであり、味読した。曰く「正岡子規や秋山兄弟が見た、坂の上の白い雲とは異なるが、下り坂の先に見える夕焼け雲にも味わいがある。夕暮れの寂しさに歯を食いしばりながら、明日も晴れかと呟(つぶや)きこの坂を下りていこう」―。
山崎善也(綾部市長)
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