■上から3年、下から3日
「上3年にして下を知り、下3日にして上を知る」。人を判断するのに、上から見れば3年かかるが、部下として仕えれば上司の長所も短所も3日でわかるという格言である。部下は上司をよく見ている。子どもが大人をじっと観察しているように、部下も上司を観察している。この格言は管理職研修にも多用され、多くの著名なリーダーも座右の銘として引用している。
私事ながら、前職の銀行員時代に管理職に就いた頃から部下には明るく大らかに接してきた。そして現職にあっては、難しい局面においてもできるだけ鷹揚(おうよう)に構えるように努めている。空(から)元気かもしれないが、俯(うつむ)いて暗い顔をしているよりはマシであろうとの思いで、大きな声での挨拶は苦手ながら意識して笑顔で応じているつもりだ。永年続けていると我ながら習慣化してくるものである。それでも咄嗟(とっさ)のハプニングが生じた時は、狼狽(ろうばい)する自分を隠せないでいるのに気づく。それがほんの数刻のことであったとしても、恥ずかしいものを観られたようなバツの悪さが残ってしまうものだ。
「五月(さつき)病」という言葉があるように5月は、緊張と期待を胸にした新規採用職員がゴールデンウイーク後に無気力や不安感に苛(さいな)まれる季節でもある。最近は新入社員のみならず、転職・転勤や異動で部署が変わるなど環境が変化した中高年にも増加傾向がみられるという。しかしながら最近の転職市場の隆盛を鑑みるに、「五月病」さえ死語と化していくのかもしれない。サービス系業界の調査では、企業の勤務年数で最も短いのは3年以下とか。つまり部下は3年も上司と接することもなく会社を見切って転職を決断し、実行しているのである。今後もこの傾向がさらに加速するようならば、上述の格言も言い回しを変えなければならない時節になっているのか…。
山崎善也(綾部市長)
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