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[善聞語録]174

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京都府綾部市

■交遊抄
「親友」の定義とは―。もとより答えはひとつではなかろうが、〝内面の奥まで語り合える間柄〞と私は勝手に解釈している。人には良い心とそうでない心が常に同居していると思う。できるだけ良心を前面に出したいと努めつつも、時として後者が顔を出す。世の舌禍事件の多くは、その忌まわしい思いが言葉となって発せられた場合が多い。親しき中にも云々(うんぬん)といった戒めもあるものの、そうした良くない面も含めて内奥を曝(さら)け出すには強く深い信頼関係が前提となるが、それこそが親友の証(あかし)ではないだろうか。
私が親友の一人として思い浮かぶ人にYさんがいる。前職の金融マン時代に仕事の関係で知り合い、もう30年以上経つ。出会った頃、彼は独立して広報誌などの出版会社を立ち上げたばかりで、海外広報の担当をしていた私をアポもなく飛び込み営業で訪ねてきた。眼光鋭く日本人離れした彫の深い顔立ちに一瞬身構えたが、その風貌からは想像し難いほどマメで繊細な面があり、次第に親しくなっていった。私の転勤などで空白期間もあったが、ひょんな事からゴルフ仲間ともなり、出会う回数が増えるにつれて一番本音を語れる間柄になった。とは言っても、談話の多くは彼がグラス片手に己を延々と語り続け、私はほとんど聞き役だったと記憶しているが、それでも人生の節目では貴重なアドバイスを数多くいただき今に至っている。
その〝親友〞が今、闘病生活を余儀なくされている。彼の実はナイーブな一面が災いしたのか、一時は心身ともに病み深刻な状態であったが、Y夫人の懸命な看病で回復途上にあるとのこと。ともに人生の第四コーナーに入った今、元気を取り戻した彼と再びグラスを傾け、ゴルフ談義も交えながら時の経つのを厭(いと)うことなく、思う存分〝Yさん節〞に興じたいものだ。
山崎善也(綾部市長)

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