三十三体観音(さんじゅうさんたいかんのん)
北多久町湧泉寺
湧泉寺の側から山中に入ると、瀧の側に石仏群があります。確認した石仏は全体で51体以上あり、六(七)観音や地蔵菩薩などの石仏が19体あります。紀年銘は「明治六年」、「明治十七年」、「昭和十八年」の3例です。ここで紹介するのは、残りの32体の一部です。
32体は聖(正)(しょう)観音や如意輪(にょいりん)観音に類似しますが、多久市内では類例がない像容(ぞうよう)です。これらの像を江戸時代に出版された『仏像圖彙(ぶつぞうずい)』の「三十三体観音」と比較した結果、阿耨(あのく)観音、威德(いとく)観音、円光(えんこう)観音、施楽(せらく)(薬(やく))観音、不二(ふに)観音、普悲(ふひ)観音と確認しました。他にも三十三体観音に比定(ひてい)可能な石仏があります。多久の地誌『丹邱邑誌』に高木河内瀧観音の項があり「三十三躰石仏中比村中ノ観音堂ニ遷今又瀧傍ニ遷ス」とあります。安置された年代は、江戸後期に遡(さかのぼ)る可能性があります。
※三十三体観音と三十三所観音(八月号・十二月号参照)の像容はすべて異なります
多久市郷土資料館長 藤井伸幸(ふじいのぶゆき)
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