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時代小説家 滝口康彦生誕100年を迎えて

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佐賀県多久市

多久市に住まい、一途に時代小説を書き続けた作家・滝口康彦(たきぐちやすひこ)氏。著作が3度にわたって映画化されるなど話題を呼び、今もなお数多くのファンが著書を手に取っています。今年は生誕100年の節目。これを記念し、多久市立図書館では滝口氏原作の映画『切腹』を3月20日(水・祝)に上映します。

■直木賞候補に6回
多久市で作家人生を送った滝口氏は、世の不条理に抗う人の心の輝きを、時代小説にのせて確かな筆致で描き出してきました。その作風は今にも通じると、多くの読者の共感を呼んでいます。
戦前は郵便集配や運送業に従事し、戦時中は海軍へ。戦後は炭鉱員として汗を流す傍ら、小説やラジオドラマの懸賞に応募していました。応募作品が全て入選すると、本格的に執筆を開始。すると『高柳父子』が第10回オール讀物新人賞の次席に選ばれ、翌年の昭和33年には直木賞の候補に挙がりました。
直木賞にノミネートされたのは全部で6作品。特に4度目の候補作『仲秋十五日』は選考委員の意見が割れ、一度は決まりかけた受賞が再投票によって覆る悲運を味わいました。
その後も新作の発表や連載、講演などで活躍していた最中、59歳で心臓を患い入院。以降は病と闘いながら日々を過ごし、80年の生涯を閉じました。

■作風と異なる私生活
たくさんの本や資料に囲まれた書斎に座り、ひたむきにペンを走らせてきた滝口氏。長男・原口郁哉(はらぐちいくや)さんは、「几帳面で記憶力のいい父は本の位置を覚えていて、『北側の本棚の上から〇段目の右から〇冊目の何々という本を見てくれ』と電話をかけてくることもありました」と当時を思い返します。
武家社会で生きる武士の姿をとおして「体制」と「個」の構造が生む悲哀をつづった滝口氏でしたが、普段の生活は、規則正しく、早寝早起き。家族と食卓を囲み、日々の郵便が一番の楽しみで、仲間との待ち合わせの時はとても早い時間から出かけたといいます。郁哉さんの話や熊日新聞の連載コラム「名刀鈍刀」(『日本列島縦断随筆』収録)からは、作風とは違った、穏やかで親しみを感じる人となりが垣間見えます。
一貫して時代小説を書き続けた滝口氏。没後20年とも重なる生誕100年を機に、改めて作品に触れてみてはいかがでしょうか。

■滝口康彦の足跡

■著作紹介(1)
「一命」
著者:滝口康彦
出版社:講談社
武家における殉死の意味を問う「高柳父子」、家族愛を描く「拝領妻始末」など6編を収録。武士の悲哀を描き続けた時代小説家の傑作選。
収録作品:「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上位討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」

■著作紹介(2)
「異聞浪人記」
著者:滝口康彦
出版社:河出書房新社
※原作は図書館で借りられます!

■映画「切腹」を図書館で上映します!
多久市立図書館創立100周年記念事業の締めくくりに、滝口氏の著作「異聞浪人記」を原作とした映画「切腹」の上映会を多久市中央公民館大ホールで開催します。くわしくは本紙裏表紙をご覧ください。

問合せ:多久市立図書館
【電話】0952-75-2233

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