■医療DX推進でより良い医療を
佐藤:医療界はマイナ保険証への移行・対応や電子処方箋の活用などが徐々に進んできました。また、タブレット端末を使用した面会や家族説明への対応も広がっており、特に遠方にお住まいの人から喜ばれています。
市長:多久市立病院でもコロナ禍においてタブレット端末による面会を実施し、大変ご好評いただきました。また、私はマイナンバー制度ができる前から、番号制度による新しい行政の創造について政府関係者に提言してきたのですが、こうして健康保険証と紐づけされると、災害時や急な体調不良で救急医療にかかる時などでも、即座に血液型、服薬歴、既往歴などが分かり、迅速な治療対応に活かせます。一刻を争う場面でも、心配が減りますよね。
佐藤:仰るとおりです。既に佐賀県診療情報地域連携システム「ピカピカリンク」という、患者さんの同意のもとで連携機関がカルテを共有できるシステムがありますが、県内と県外の一部周辺機関での利用に限られます。マイナ保険証であれば日本全国で共有できるので、患者さんと医療従事者の双方にとって良いですよね。これらを併用すれば、より良い医療の提供につながると思います。
市長:そうですね。公立佐賀中央病院は他の病院との連携の核となる大きな役割もあります。スムーズな診療を助ける良い仕組みだと思います。今後、全国的にも人手不足も課題になる恐れがあり、DXの効果はもはや欠かせないものですね。
佐藤:ええ。上手に活用すれば、丁寧な説明を伴う診療や親切な窓口応対なども当然のものにできると思います。前任地ではがんの患者会に医師として参加していましたが、それぞれの不安な思いを十分に伺ったうえでお話しすると、非常に落ち着かれるんです。やはり、じっくりと傾聴できるゆとりは持っておきたいと思いましたね。良い対応を受けて「また行こう」と思っていただけることが適切な治療や定期的な健康チェックには大切なので、そうした工夫もしっかりと行いたいと思います。
■開院に向けて 今年の抱負
佐藤:公立佐賀中央病院に健康を考える人が集い、コミュニティを築けるといいなと願っています。多久市と小城市にとどまらず周辺の広い地域から来院していただけたり、将来的には「この病院の近くに住めば大丈夫」と移り住んでいただけたりするような、安心をお届けできる病院づくりにこれからも邁進していきます。
市長:佐藤先生とお話ししていると、考え方が呼応しているなといつも感じます。佐藤先生と多久市、小城市が心を一つにし、より良い医療の提供をめざしてさまざまにチャレンジしていくつもりです。
巳年の本年は、努力が実る年になると易学的にはいわれています。そのためにも粘り強い努力は不可欠です。開院まであと半年余り。これまでの取り組みが多くの人に健康な暮らしと人生をもたらすことができるよう、日々新たに、着実に整備していきます。本日はありがとうございました。
■多久市長 横尾俊彦(よこおとしひこ)
多久小城医療組合 管理者。医療サービスの充実をめざし、新公立病院の設立・整備をリード。令和元年度、3年度、4年度とこれまで3回、特定健診実施率と特定保健指導実施率で全国の市・区の中で2位の栄誉へと導き、厚生労働大臣表彰を受けた。
■多久小城医療組合 顧問 佐藤清治(さとうせいじ)
前佐賀県医療センター好生館 館長。佐賀県医師会常任理事。佐賀県で生まれ育ち、佐賀医科大学(現/佐賀大学医学部)で外科の道へと進んだ。専門は消化器外科。尊敬する人物は元多久市立病院 院長の原田貞美(はらださだみ)氏。
■新病院の診療科目(予定)
多久市立病院と小城市民病院にある既存の診療科に加え、新たな診療科を設置します。
▽既存の診療科
・内科
・呼吸器内科
・消化器内科
・循環器内科
・肝臓内科
・腎臓内科(透析)
・糖尿病内科
・神経内科
・小児科
・外科
・整形外科
・耳鼻咽喉科
・皮膚科
・産婦人科
・脳神経外科
・泌尿器科
・リウマチ科
・リハビリテーション科
▽新設する診療科
・眼科
・外来化学療法室
▽付帯事業
・訪問看護ステーション
・健診センター
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