◆「山上からの九年庵」
それは感動的な光景でした。下から見上げると、木々が垂直に茂り森が迫ってくる山容でしたが、登って行った先で見たのは大きなモミジの古木とフカフカの腐葉土に覆われた平地が広がっていました。
そして予想しなかった光景がもうひとつ…、そこから下を覗(のぞ)いて見えたのは、九年庵の別邸と紅く色づいた美しいモミジの紅葉でした。
明治33年からこの庭園を築いた伊丹氏は、自然に逆らうことなく地形を活かした見事な回遊庭園を築き上げていますが、明治から大正とこの別邸に招かれた方々はこんな美しい光景を見ていたのかと感じ入りました。もうずいぶん前の事ですが、今でも鮮明に記憶している出来事です。
佐賀県の所有となった旧伊丹別邸と庭園の一部を、県が昭和63年から一般公開をして36年、今回これまでコースに入っていなかったこの山上の平地が、今年整備されて公開される事となりました。
ただ、仮設の階段を上り下りしないと見られない山林部からですが、眼下に見える風景と頭上に広がる色とりどりの紅葉はきっと満足できるものだと思います。仁比山の秋が深まってきました。今年の九年庵はどんな紅葉を見せてくれるのでしょうか。
文化財観光案内専門員 執行 真知子
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