◆「冬至と太陽」
今年の冬至は12月21日です。昭和63年から始まった発掘調査によって、弥生時代の巨大なクニの姿がはっきりと見えてきた吉野ヶ里遺跡ですが、太陽との深い関係が分かった時は感動しました。現在でも地球に生きる全てのものにとって太陽は「命」そのものですが、この神埼の地でもはるか古代からさまざまな祀りごとに太陽が関わっていたのです。
吉野ヶ里歴史公園の丘陵の上に北内郭という大型建物や4棟の物見やぐらが復元された所があります。平成7年に畑だった所を発掘した時、ここには40ヘクタールを囲む大環壕の中にさらに、二重の環壕で囲まれ、しかも四つの物見やぐらが中心線を挟んで対になっていました。ひとつの柱穴の大きさが50cm以上あり、13m四方に造られた巨大な大型建物跡が出土…ここは後に主祭殿と呼ばれるようになりますが、先に発掘が行われていた南内郭の遺構よりはるかにすごい遺跡が出てきたわけです。特にその中心線が、夏至の日の出と冬至の日の入りを結んだものだと分かった時は感動しました。
6月の夏至の日から徐々に日照時間が減っていくのは、太陽の力が弱まっているからだと古代の人は信じ、冬のこの時期に最も短くなるのは、太陽の力がいよいよ衰えた…と感じたのです。ですから、無事にこの日を乗り越えて、また少しずつ太陽が復活していくのはこの上ない喜びだったと思います。
暗闇というのは人の心に恐怖を生みます。今は、さまざまな灯りがあるので闇夜でも平気ですが、万が一、その灯りが全て消えて真っ暗になったとしたら…考えただけでも怖くなります。冬至の日に、江戸時代の頃からゆず湯に入り始めたのも、この季節に熟れて香り高い貴重なゆずが厄払いとなり、暗闇に忍び寄る邪気を払うと思ったからです。
この日、古代の人々が特別な思いで見つめていた南西の方角に沈んでいく太陽は、時空を超えてもやはり特別な太陽です。
文化財観光案内専門員
執行 真知子
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