◆9[淡路]2代で語り継ぐ震災の記憶
親子2代にわたり、語り部として阪神・淡路大震災の被災経験と教訓を語り継ぐ活動を展開している米山正幸さんと未来さん。その動機や活動への思いについて聞きました。
(取材・文 本紙編集部)
米山正幸(こめやま・まさゆき)さん
野島断層のある淡路市(旧北淡町)出身。北淡震災記念公園野島断層保存館で館長を務める傍ら、語り部として各地で自身の経験や教訓などを伝えている。
米山未来(こめやま・みく)さん
生後2カ月で被災。22歳の時に語り部活動を開始。2024(令和6)年にUターンし、現在は講演活動のほか、Instagram(@0kome_chan)などSNSを通じて発信している。
Q.未来さんが語り部になったきっかけは。
未来さん:大学進学を機に上京し、阪神・淡路大震災に対する関西との温度差に衝撃を受けました。東京では1月17日前後でもテレビで震災の話題はわずか数分しか取り上げられず、語り部さんたちがつないできてくれた思いをもっと広げていきたいと考えるようになりました。当初は、震災の記憶のない私に語る資格はないとためらっていましたが、高齢などで語り部を卒業する人が増え、やろうと決意。当時は東京在住で人脈もなかったので、SNSでのライブ配信から始めました。
正幸さん:本人からやりたいと打ち明けられた時は、うれしかったですね。元々、震災を経験していなくても語り部はできるというのが私の考えで、若い人にやってほしいという思いが強くありました。震災を知らない人が増える中、教訓を後世に残すためには、体験していない側の声も大事だと思っています。
未来さん:一つでも多くの命が助かってほしいという思いで震災時の状況や防災対策を伝えており、最近は中学・高校からも「生徒に近い立場の人の話を聞かせたい」と講演依頼があります。震災を知らない世代の話は、聞く側も自分のこととして捉えやすくなるのかなと思います。
Q.語り部活動で特に伝えたいことは。
正幸さん:人と人との絆の大切さです。震災当日、消防団員として救助活動をして回りました。生き埋めになった300人全員をみんなで助けられたのは地域のつながりのおかげで、住民同士の交流や声かけが一番の防災対策だと思います。それと、家具の転倒防止や住宅の耐震化などの身近な備えも重要だと伝えたいです。
未来さん:皆さんがつないできた震災の教訓は、失われたたくさんの尊い命の上に成り立っているものです。途切れさせないよう、防災や減災の輪を世代を超えて広げていきたいです。
◇北淡震災記念公園野島断層保存館
阪神・淡路大震災で現れた野島断層をありのままに保存している展示施設。震災の語り部の派遣も。
場所:淡路市小倉177
【電話】0799-82-3020【FAX】0799-82-3027
詳しくは、県民情報番組「ひょうご発信!」で放送します。
サンテレビ 1月12日8時30分~55分
「ひょうご発信!」検索
◆阪神・淡路大震災から30年を迎えて
阪神・淡路大震災から間もなく30年です。犠牲となられた方々に鎮魂の祈りをささげるとともに、復興に歩んでこられた全ての皆さまに敬意を表します。
震災を機に、ボランティア支援や心のケアなど多くの取り組みが生まれました。災害前よりもよりよい社会を目指す「創造的復興」の考え方は、兵庫から広がり、国内外の災害復興の基本理念になっています。
1月17日の「ひょうご安全の日のつどい」、9月の「創造的復興サミット」などを通じ、震災の経験や教訓を次世代につないでまいります。
兵庫県知事 齋藤元彦
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