■山野里宿遺跡出土呪符木簡(じゅふもっかん)
前回、前々回に引き続いて山野里宿遺跡の出土遺物のお話です。
山野里宿遺跡からは、木製品が非常に多く出土しているとお話ししましたが、その中には木簡も含まれています。
木簡というと、何となく飛鳥時代や奈良時代に使われていたようなイメージがありますが、考古学上は木に墨で書いたものは時代を問わず「木簡」といいます。
さて、今回紹介する呪符木簡は、おまじないに使われたと考えられている木簡です。「呪符」の字だけ見ると、呪いに使ったのでは、と勘違いしそうですが、そんなことはありません。
木の板に「咄天罡(とつてんこう)…尸鬼急々如律令(しききゅうきゅうにょりつりょう)…」と書かれた木簡が3点出土しています。
天罡というのは北斗七星のことで、「咄天罡」は北斗七星に呼びかける呪文です。「尸鬼」は鬼や災いのことを指し、「急々如律令」というのは、おまじないの枕詞のようなものです。律令という古代の法律のように速やかに行いなさい、という意味で、古代中国の公用文の末尾に書き添えられたものが、陰陽道の発展の中で悪魔祓いの文句として使われるようになりました。
したがって、「北斗七星よ、速やかに災いを祓い給え!」という意味になります。
山野里宿遺跡で生活していた人たちも、きっといろいろな災難に悩まされて、厄除けがしたかったのだと思います。
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