■宗門檀那請合諚(しゅうもんだんなうけあいおきて)(前編)
神戸大学大学院人文学研究科 井上 舞
山南町北和田での資料調査で見つかった「宗門檀那請合諚」という文書があります。
江戸時代、幕府はキリスト教を固く禁じ、人々にいずれかの寺に所属することを義務づけ、その証明を寺院に請け負わせていました。
寺檀(じだん)制度といって、寺院は寺請証文や宗旨人別帳(しゅうしにんべつちょう)を作成して、檀家の人々がキリシタンや不受不施派(ふじゅふせは)(日蓮宗の一派で幕府に禁教とされた)でないことを証明し、一方で檀家は寺への参詣や法要を営むことが義務づけられていました。
同内容の文書は全国に残っており、慶長18年(1613年)の年号が書かれたものが多いのですが、北和田の文書は、天正10年(1582年)という年号が記されています。
掟書は全15箇条から成り、まずキリシタンがどのような邪宗で仏法の敵であるかを説いています。また「檀家としての務めを果たさず、寺院で行われる法会や先祖の命日に参詣しない者、寺院の建立や修理に非協力的な者、所属する寺以外で先祖の仏事を行う者などは、キリシタンや不受不施派であることを疑って吟味しなければならない」などと記してあります。さらに末尾は「この十五箇条にひとつでも背けば、上は帝釈天(たいしゃくてん)・四天王・五道の冥官(みょうかん)をはじめ、伊勢神宮や八幡・春日大明神、日本各地の神々からの神罰を被ることになる」と締めくくられています。
かなり厳しい内容が書かれていますが、実はこの文書は、偽文書なのです。
問合せ:社会教育・文化財課(山南庁舎内)
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