文字サイズ
自治体の皆さまへ

野草散歩(168)

25/50

兵庫県新温泉町

■シオガマギク(ハマウツボ科)
今回は以前見られたものの、近年姿を消してしまった植物を取り上げました。鹿の食害による自然の荒廃は新温泉町でも同じで、近年、貴重な植物も急速にその種類を減らしています。上山高原で散見されていたシオガマギクもその一種です。鹿害は衰えることを知らず、山野に囲まれて生活する我々人間も疲弊(ひへい)するばかりです。林業農業を糧とする人々はもちろん、交通機関との事故も多数、そして人間が直接襲われる事態にも。一度失われた野生植物の再生は、ほぼ不可能と言われています。蝶や虫も山野草に卵を産み付けて生き継いでいますが、その食草が消えると子孫が途絶えます。気がつけば、私たちはどれだけ野の花や虫や草木に癒(いや)されていたことでしょう。消滅してしまった現在、その美しさを思い出すと寂しい気持ちが胸に沁みてきます。
シオガマギク(塩がま菊)はハマウツボ科に分類される多年草で、亜高山の湿った草地などに自生しています。上山高原では三角点下の湿地や日陰となる場所で、10年ほど前まで、ちらほらと見られました。茎は高さ30~50cmで直立し、葉の上部は互生、下部は対生しています。葉は長卵形で基部は切型となる三角形、葉の周囲は重鋸歯(大小のギザギザがある)で先は尖っています。花は紅紫色の唇形(唇のように上下に分かれている)で長さ2cm、上唇は長く反り返って先が2裂、下唇は短く、先は3裂しています。花弁は茎の上部や葉腋に集まって付き、輪生、あるいは互生して並んでいるので、かざ車のようにも見えます。本種は半寄生植物であり、移植は不可。園芸業界でも品種改良が試行されたそうですが、失敗に終わったということです。

文・写真 中澤博子さん

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU