■ジキタリス(オオバコ科)
ジキタリスは西~南ヨーロッパ原産の二年草で、日本へは江戸時代に観賞用とし導入されたそうです。初夏の頃、洋風の庭などでよく見かける大型の植物で、以前はゴマノハグサ科に分類されていましたが、現在はオオバコ科に入っています。心臓病の薬としても知られていますが、使用には危険が伴うため、専門医以外の使用は禁止されています。最近は鹿の忌避植物でもある本種が各地で野生化しているとの情報が散見されますが、先日、野草仲間と植物談義をする中で、久斗山ではジキタリスが花盛りだとの話を聞き、ちょっと車を回して様子を見てきました。
大味口(おおみぐち)付近を覗いてみると、久斗川との合流点に50株ほどのジキタリスが群生しており、思わず声を上げました。更に久斗川沿いを遡(さかのぼ)っていくと、道端で数本、川沿いに数十本、とジキタリスが咲き継いでいました。久斗山集落手前でUターンした時です。河原一面に鮮やかなピンク、白、紫のジキタリスのお花畑が広がっているのを見ました。その数500本~700本ほどでしょうか。
ジキタリス(実答里期)は草丈80~200cm、葉は卵状長楕円形で下部の葉柄は翼状で縮れています。裏側は白い細毛に覆われ縁は波状に切れ込み、質は厚く柔らかです。茎は根元から数本立ち、細毛が密生、茎先に30~50cmの総状花序(そうじょうかじょ)を一方向につけ、下から咲きあがります。小花は直径5~7cmの袋状の鐘形、果実は広卵形で5裂した萼(がく)に包まれており、8月頃茶色い細かな種子を飛ばします。名前はラテン語の指の意味で、花の形が指サックに似ていることから。別名の「狐の手袋」は英名のフォックス・グローブより。全草有毒とのことなので、くれぐれもご注意を。
文・写真 中澤博子さん
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