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野草散歩(164)

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兵庫県新温泉町

■ヤグルマソウ(ユキノシタ科)
緑の楽園と言われていた新温泉町の畑ヶ平地域ですが、この10年ほどで鹿の食害に遭い続け、現在はすっかり荒れてしまいました。あらゆる植物を食べ尽くしてしまう鹿の習性。季節の草花を見に出かける楽しみを奪われ、過去に撮った写真を眺めるばかりのこの頃です。時折出かけるのは貴重植物の保護柵設置のため。その行き帰りも相変わらず黒土むき出しの斜面が続きます。
先日、鹿柵設置に出かけた畑ヶ平の深山で、崖にヤグルマソウ(矢車草)が一輪咲いているのを見かけました。柔らかい大型のヤグルマソウは鹿の大好物ですが、食べるには届かない場所だったようです。かろうじて難を逃れた白い穂状の花は、黒土の広がる崖に輝くように咲いていました。
ヤグルマソウは日本や朝鮮半島などに自生するユキノシタ科の多年草で、日本では北海道から本州にかけての亜高山で見られるようです。但馬地域では、以前は深山近くになると至る所で咲いていましたが、今はほとんど見られなくなっています。草丈は60~100cm、根茎は太く横に伸び、根元の葉は長柄があって柄の長さは15~30cm、小葉は倒卵形で長さ15~40cm、先は3~5裂しており、この形がちょうど鯉のぼりの先に飾る矢車の形に似ていることからヤグルマソウの名前が付けられたようです。花は茎先に白い小花を穂状にたくさんつけますが、花弁に見えるのは萼で、これは花後も残ります。
鹿の食害は収束のきざしもありませんが、どうにか絶滅だけは免れて、それぞれ植物達も何とか生き続けていってほしいと思います。

文・写真 中澤博子さん

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