■サルトリイバラ(ユリ科)
私が幼い頃、母は親戚の畑を借りて作物を育てていました。少し山深い畑でしたので、一緒に畑へ通う道すがらは、道中の草木についていろいろと教えて貰える楽しいひとときでした。その中に赤いサンキライの実がありました。それは青いうちでも食べられるとも。後にサンキライという名前は中国名で、日本名のサルトリイバラ(猿捕り茨)のことでした。
本種は落葉半低木のつる性植物で雌雄異株となります。以前はユリ科に分類されていましたが、現在はサルトリイバラ科となっています。蔓全体に鋭い鉤爪(かぎつめ)があり、猿もこの藪に入ると身動きがとれなくなるだろうという意味でその名前があるとか。私も青い実を捥(も)ぐたびに小さな手をひっかいた記憶があります。花は5月頃小さな薄黄色の6弁花を散形(軸の先に放射状に花をつける)につけ、雌株の雌花の先は反り返っていますが、雄株の花は退化しており、ほとんど花弁はありません。茎の長さは70cm~3mほどで葉は互生しており、長さ幅ともに3~12cmの円形で先は小さく尖ります。基部は丸くて葉縁は全縁で(ギザギザがない)表面は皮質で光沢があります。果実は径1cmの球果で11月頃に赤熟、中には2~5個の種があります。落葉性ですが蔓は枯れずに冬を越し、春は托葉に包まれた新芽が節々から伸びて新芽を展開します。柔らかなサンキライの葉は5月の節句の柏餅の代わりにも利用されました。
柔らかな葉は剝(はが)れにくく、餅にくっついたまま食べた食感が、記憶の底にある懐かしい植物です。
文・写真 中澤博子さん
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