■スギナ(トクサ科)
春を告げるツクシはスギナの胞子葉です。雪の中から顔を覗かせている姿を見かけると、春を待ち望む私たちも思わずしゃがんで覗いてしまいます。名前の由来はスギナが杉の葉のように見えて、ツクシは食用となるので菜として杉菜と名付けられたとか。道沿いや畔などで幼い頃から慣れ親しんだ早春の野草は、誰しも幼い頃の思い出の一つ二つにつながっています。ツクシ(土筆)と言う名前はスギナについて出てくる意味から「付(つ)く子(し)であり、また袴の部分で継いでいるように見えることから「継(つ)ぐ子(し)」となったなどの説が知られています。
ツクシはシダ植物の仲間でトクサ科に入ります。トクサ科の中では国内では最も小さく、高さ10~20cm、浅い地下に長い地下茎を伸ばし、地上部の茎は中空でわら色、各節部に袴(はかま)と呼ばれる葉の変形したものが付き、頂点に胞子穂がつきます。胞子穂は亀甲型(きっこうがた)の胞子嚢(のう)がたくさん集まってできており、成熟すると胞子嚢が開いて細かな胞子を飛ばします。その後ツクシの茎は枯れますが、同じ場所から栄養茎(えいようけい)であるスギナが伸びてきます。高さは30~40cmほどのスギナは緑色で光合成を行い、各節には鞘状の変形葉がついて、小さな枝が輪生しています。
地下茎は浅く長く伸び、畑に生えたりすると、耕作時に細かく切断された後も再生して繁茂する強い野草です。花期は3月となっていますが、新温泉町の海岸沿いでは、毎年2月始め、場所によっては1月の内にも開花し、温かい海風の中で淡いピンク色の頭を伸ばしてきます。因(ちな)みに花言葉は「向上心」「忍耐」とか。
文・写真 中澤博子さん
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