文字サイズ
自治体の皆さまへ

〔特集〕今あるものを、生かす。(1)

1/32

兵庫県朝来市

全国的に課題となっている空き家の増加。
朝来市で行った令和3年度の実態調査によると、市内の空き家の数は1,468件あり、今後さらに増加する見込みです。
そんな空き家に、生き生きと暮らす移住者が。
空き家、そして朝来市での暮らしについてお話を伺いました。
本特集が空き家を所有する人や、空き家を活用したい人の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

■暮らしの豊かさを楽しむ
朝来市に移住して1年を迎える張山理恵(はりやまりえ)さんが住む家は、築102年の空き家。移住の際は事前に下調べをせず、まずは空き家バンクに登録されている家を中心に探していたところ、今の家にたどり着いたとのこと。
「空き家はたくさん見学しましたが、この家の決め手は景色でした」
早朝の澄んだ空気の中、粟鹿山が見えるウッドデッキで珈琲(コーヒー)を飲む時間が癒しのひと時なんだとか―。また、家の裏にある森の雰囲気もお気に入りで、川のせせらぎと森の中に日の光が差し込む瞬間が、理恵さんをなんとも言えない気持ちにさせてくれるそうです。
都会と比べてお店も早く閉まる上に虫もたくさん出るけれど、目まぐるしく過ぎる都会の生活では気が付かなかった暮らしの豊かさを日々感じているとのこと。また、不便に感じることが、逆に暮らしを楽しむポイントになっていると話します。
「移住するまで、旬の食べ物のおいしさや冬の寒さを知りませんでした。都会に住んでいる時はいつの間にか時間が過ぎていたけれど、四季を感じながら生活することの楽しさを実感しています」

■こだわりの詰まった家づくり
「今はリモートワークの傍ら、家づくりが目下の課題で毎日がとても忙しいんです」
現在、家族3人で住まいのリメイク真っ只中とのこと。取材中、お家を見学させてもらいましたが、元々あった部屋を潰して間取りを大きく変え、元の家の良さを残しつつもおしゃれな雰囲気を醸し出していました。作業中に喧嘩をすることもあるけれど、DIYの様子を撮影した動画をYоutubeチャンネルにアップするなど家族3人で力を合わせながら、家づくりを楽しんでいるそうです。
そんな張山さん一家の家づくりのテーマは「再利用」。家の中で使われていたふすまをカットしてドアや窓に使ったり、土壁を粉々にしてセメントと混ぜ固めて玄関台にするなど家の至る所に趣向を凝らしたポイントが散りばめられています。また、元々使われていたものを再利用することでごみも費用も最低限に抑え、家計だけでなく環境にもやさしい家づくりを進められています。

▽張山邸のこだわり
#01ウッドデッキなどに使用している焼き板。木を焼くことで湿気を防ぎ腐りにくくなる。
#02土壁とセメントを混ぜ合わせて作られた玄関台。土台は石を敷き詰めて作成。
#03理恵さんのお部屋。漆喰塗の壁とライトが室内をあたたかい雰囲気に。部屋によってピンクや青など壁の色を変えている。
#04元々あった2階の部屋をつぶして開放感のある吹き抜けに。
#05元々使われていたふすまを再利用し、トイレのドアに。
#06玄関土間と隣接しているお洒落な台所。ゆくゆくはカフェをオープンできればともくろみ中。
※画像など詳しくは本紙をご覧ください。

張山 理恵(はりやまりえ)さん(白井区)
大阪府吹田市出身。東京在住中に父 正志(まさし)さんのがんが見つかったことがきっかけで移住を決意。現在は、父 正志さんと母 来連(らいれん)さんと3人暮らし。リモートワークをしながら家のDIYに奮闘中。

■移住する気なんてなかったのに
実家が大阪府吹田市で、移住前は東京に住んでいた理恵さんは、実は田舎への移住に興味がありませんでした。
そんな理恵さんが移住を決めたきっかけは、父 正志(まさし)さんががんを発症されたこと。コロナ禍中にがんが発覚し、ゆくゆくは田舎に住みたいと話していた父が死んでしまうかもしれないと思ったことが、理恵さんの移住を後押ししました。空き家も、もともととび職をされていた正志さんにとって、DIYで気持ちが前向きになるリハビリになればと思い購入し、理恵さんも正志さんのリハビリの付き添い程度で暮らすつもりで考えていました。
家を購入したものの、現場で道具を触る機会が少なかったため、理恵さんは、リハビリとはいえ父はDIYにはあまり前向きにならないだろうと思っていたそうです。ですが、理恵さんの予想を超え、空き家のDIYにのめりこんだ正志さんはみるみる元気に。さらに、移住に後ろ向きだった理恵さんも、どこか懐かしさを感じる家の雰囲気に居心地良さを感じ、この地で暮らすことを決意しました。理恵さんは「私は根っからの都会っ子で、移住なんて無理無理と思っていたのに、家族の誰よりも暮らしを楽しんでいますし、父も大阪に帰りたくないって言ってます」と笑って話します。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU