■家族や弟子たちの存在が支えに
民謡を歌い続けて約40年。谷住さんは「家族が応援してくれたからこそ、生きがいと喜びを感じながら、ここまで続けてこられた」と振り返る。現在は、17人の弟子たちとともに生野銀山石刀節の継承と保全活動に取り組んでおり、「弟子たちの支えのおかげで、この唄を守ることに力を注ぐことができた」と語る。これからも、大切な家族と弟子を守りながら、生野の宝の唄である生野銀山石刀節を守り伝えていきたい。そう語る表情には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
■ふるさとの唄を未来へ
生野銀山石刀節は、生野銀山の坑道で過酷な労働に従事する坑夫たちが、つらさを紛らわせるために歌っていたと伝えられている。谷住さんは「歴史ある生野銀山に携わった坑夫たちの想いを、一人でも多くの人たちに知ってほしい」と願いを込め、歌い続けてきた。また、後世にこの唄を伝えるため、郷土教育の一環で生野小学校の児童に民謡を教えている。今はまだ民謡の魅力に気が付かなくても、いつか大人になった時にこの唄を思い出し、ふるさとの誇りとして魅力を広めてくれることを願いながら、今日も変わらぬ想いで歌い続けている。
谷住千里(たにずみちさと)さん(生野1区)
友人の誘いで民謡教室に通い始めたことがきっかけで、民謡を歌う楽しさに魅了される。先生から素質を認められ、生野の民謡「生野銀山石刀節(いくのぎんざんせっとうぶし)」を歌うよう勧められる。先生の指導のもとで腕を磨き、さまざまな大会で賞を受賞。平成6年に開催された「兵庫県日本民謡祭」では、第22代兵庫県名人位に選ばれる。長年、活動を支えてくれた家族に感謝しながら、兵庫県内を中心に民謡の魅力を広める活動を続けている。現在も民謡を歌い続けながら、生野銀山石刀節の継承に力を注いでいる。
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