■トップが目指すチーム作りについて
町長:組織をまとめる上で大切なことは2点あると思います。1つ目は「挨拶をする」という事。簡単で当たり前のことですが、心の底から挨拶が出来るかが仲間と一緒に仕事をする上で最も重要だと考えています。朝や帰る時、すれ違う時など挨拶ができるとコミュニケーションがスムーズになり、業務が円滑に進みますよね。
2つ目は、個性豊かな職員が所属する中で「自分の思いを伝える」こと。幅広い年代の職員がいるなかで、年代を超えて意見が言い合えるような職場環境が必要だと思います。また、新しいことを行う時、自治体では問題点が1つでもあると、これを行うのはやめておこうと決断されてしまう事があります。リスクを全て回避しようとすると前進出来ません。失敗を恐れずスピード感を持って挑戦し、みんなで協力して前に進んでいく姿勢が大切だと考えています。
また、最近はコンビニエンスストアなどでもさまざまな手続きが出来るようになりましたが、まだ役場でしか出来ない手続きはたくさんあります。住民の皆さまは役場を選べません。我々はサービスを提供する側として、住民の皆さまの目線で考えて応対をすることで、役場の雰囲気がより良くなると思います。
社長:すばらしい考えだと思いますね。私も町長とすごく近いところはあります。私はまず自分の性格的にも何かカリスマ性を持って引っ張るような人間ではないと思っていますし、ヴィッセル神戸は私が社長ですが、会長に三木谷浩史氏がおり、彼がカリスマ的なリーダーであります。私が会社において理想として求めるものは、各個人がそのリーダーシップや主体性を持つことが大事だと考えています。山名町長が仰った通り、物事を進めるときにはいろんな問題もありますし、お互いに言いたいことが言えないと結構難しくなりますよね。その時に一人ひとりがリーダーシップを持っていれば、小さな問題が解決したり、双方の落としどころが見えてきたりと上手く進んでいけると思います。
あと、我々が会社として非常に恵まれているところは、社員全員の最終目標は試合である事。向かう方向が全員一緒なんですよね。試合を運営する人もファンクラブを運営する人も、試合に向けて全員が一つになって進んでいく時には、各個人がリーダーシップを持って自分で進んでいける組織になると、一番強い組織になると思います。それを私も常に言い続けなければならないと思いますので、事あるごとに「リーダーシップを持って」「自分で考えて」などと社員に伝えるようにしています。私がいなくても回るような組織が一番理想かなというふうに考えています。
■スポーツと健康促進の連携〜eスポーツを含めた施策〜
社長:eスポーツ※については日本ではそれほど市場規模は大きくありませんが、海外ではプロeスポーツプレーヤーがいたりと非常に注目されています。自分ではなかなか身体を動かすスポーツは出来ないけれど、手先が器用な人はいっぱいいると思いますし、ゲームの中でもスーパープレイがあったりするので、そういう意味ではサッカー同様に人々に感動や興奮を与えるものであると考えています。
eスポーツについては楽天グループとして事業があったり、我々としてもeスポーツについて、以前一つ取組みをさせていただいたりと少しずつ動き始めてはいます。日本にeスポーツの波が来たときにはただちに動けるように、ヴィッセル神戸としても準備していきたいと考えています。
町長:この前、車のグランツーリスモというゲームの大会で優勝した選手を実際のレースのプロドライバーに育て上げ、そこでも優勝するという実話の映画を観て、eスポーツの凄さを知りました。社長も言われたように、相当テクニックがいるのですよ。それを考えると、今後、当町でeスポーツを展開する可能性としてはあると思います。別の角度からいくと、AIやロボットなどがどんどん発達して人間社会の中で活躍していく時代になっています。それを動かす人材が必要になってくるって考えると、eスポーツを経験された人材がこれからのまちづくりに必要になると思いますね。
社長:ドローンなども地域の課題解決に役立ちますよね。
町長:当町は山に囲まれていてかなり急峻ですので、無人の機械を使って山の再生や山林の作業をしていくことになると思います。ゲーム機を上手く操作出来る方がパイロットになっているという事例もたくさん報告されているので、新しい分野ですよね。
■住民の方、ファンの方へメッセージを
社長:皆さま昨年は応援をいただきましてありがとうございました。おかげさまでヴィッセル神戸として1年間戦い抜き、リーグ優勝を果たすことが出来ました。ヴィッセル神戸では、開幕戦と最終戦の時に「ヴィッセル神戸を応援する首長の会」という形で県下各市町の首長の皆さまにお集まりいただいてます。そこで山名町長には事務局長として、取りまとめをしていただいており、本当に感謝しております。我々としては、神河町の皆さまに会場にお越しいただき、楽しいな、元気がもらえるなと思っていただけるような試合をしていきたいと考えていますし、兵庫県を代表するサッカークラブとして、皆さまの健康や地域活性化に貢献できるよう頑張りたいと思います。今年1年も応援よろしくお願いいたします。
町長:当町もヴィッセル神戸を応援する首長の会にて事務局長を務めるほか、昨年は当町職員のファンクラブを設立しました。町の皆さまにヴィッセル神戸の試合を観戦していただけるような機会をどんどん作っていきたいと考えています。昨年、J1リーグ初制覇を成し遂げたヴィッセル神戸様、非常に強いチームです。町全体で応援していきます。
また、町は今年で創立19年目に入ります。粟賀小学校跡地公園・図書コミュニティ施設が令和7年にオープンし、合わせて20周年を迎えます。町としてさらに元気な神河町を目指していきたい。そこに、ヴィッセル神戸様との連携事業が具体化できれば、非常にワクワク楽しい町になると思っています。今年1年、皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
※eスポーツ…電子機器を使う娯楽や競技、スポーツなどのこと
千布勇気(ちふ・ゆうき)
1985年佐賀県生まれ。東京大学大学院卒業。2011年楽天株式会社に入社し、人事部や社長室(三木谷秘書)を経て2019年より楽天ヴィッセル神戸株式会社常務執行役員に就任。2022年6月より同社代表取締役社長を務める。
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