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認知症あれこれ

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兵庫県高砂市

少し古い統計になりますが、現在、65歳以上の高齢者の16パーセント以上が認知症であると推計されています。その人口は、約600万人以上に上ると思われます。
そもそも認知症とは何でしょう?認知とは何を意味するのでしょう?
認知とは、対象となる物や人、文章、作業内容などが何であるかを理解したり解釈したりすることでしょうか。従って、認知症とはそれらができなくなった状態ということになります。具体的にはその人が元来持っていた知的能力が下がった結果、今までできていたことができなくなった状態です。なので、認知症とは病名ではなく、前述の病的な状態を表している言葉です。
では、どんな理由から認知症になってしまうのか?
複数の原因が知られています。最も代表的なものは、脳細胞が勝手に死んでいく病気の代表、皆さんも名前を良く耳にする「アルツハイマー病」です。次に代表的な原因疾患は、脳梗塞を代表とするけがも含めた「脳血管障害」が挙げられます。そして、他の脳の病気からも認知機能は低下します。しかし、脳の疾病ではなく薬物や脳以外の身体の異常からでも認知症になってしまうんです。怖いですね。
意外とよく見られるのは、アルコールの飲み過ぎからです。単に酔っているということではなく、長年の飲酒が度を過ぎれば認知症になってしまいます。お酒が好きな僕も怖いと感じます。身体疾患で代表的なものは、甲状腺や副甲状腺、副腎のホルモン量に異常を来す病気でしょうか。ただ、幸いなことに脳以外の身体の病気から起こる認知機能の低下は、早期に治療可能な原因疾患であれば、その原因となっている病気が治療の結果良くなると、改善していくこともあり得ます。ここでも病気は早期発見と早期治療が重要です。
次に、大切な人が認知症かどうか心配になったらどうすれば良いのでしょう?
まずは、かかりつけ医を受診して相談してください。そして、必要なら精密検査のできる医療機関を紹介してもらいましょう。場合によっては、鬱病などの認知機能が一見低下したように思える病気で、認知症ではないこともあるかもしれません。
さらに、認知症と診断を受けた場合は、どのような対処や治療があるのでしょうか?
直接的な治療法が存在するのは、多くの場合アルツハイマー病に限られます。現在では、複数の良い経口薬が処方できるようになりました。その他の認知症の原因疾患については、治療法がない病気もありますが、基本は原因疾患に対する治療を行うことになります。ただ、臨床現場に居て感じることですが、医学的な治療は確かに重要です。しかし、それと同じくらい、もしくはそれ以上に、認知症になった人が、いかに苦がなく楽しく生きがいを持って生活を営むことができるかが大切ではないでしょうか。
特に重要なことは、家族や友人と頻繁に楽しくコミュニケーションを取り続けることだろうと考えます。ひいては、そのことが認知症の進行抑制につながる場合も十分有り得るかもしれません。
いずれにせよ、これからの高齢化社会では、認知症は社会の中でより大きな問題となっていくことは間違いありません。今後は、認知症の患者さんがより生活しやすい環境と社会を実現していくことを模索する必要があるのではないでしょうか。

高砂市医師会
神経内科医 友田慎吾

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