◆地元の人から愛されるこのお店を残したい「さいとう製パン」
創業70年の老舗パン屋「さいとう製パン」。古き良きレトロなお店に近づいていくと、甘くて香ばしいパンの匂いに包まれます。おじいちゃんおばあちゃんから子どもまで、年代の垣根を超え、時代を超えて親しまれています。
創業当初は、齋藤正勝さんタキ子さんご夫婦がお店を切り盛りし、ニセコ町をはじめ、近隣町村の小中学校の学校給食用パンを作って配達していました。
タキ子さんが90歳を迎えたころ、当時札幌市のパン屋で勤務しながら、度々ニセコ町を訪れていた四釜さんが「このお店を続けてくれる後継ぎを探している」という話を聞き、動き出します。
「今まで残してくれた機械を使わずにダメにしてしまうのはもったいないと思いました。ニセコ町民から親しまれているこのお店はとても素敵な場所だと思ったので、少しでも協力できたらと思い、引き継ぐことを決めました」と話します。
◇身体に優しいパン
四釜さんがお店を引き継ぎ大きく変わったのは、パンに使う材料。昭和初期にはどのパン屋でも当たり前に使われていた輸入小麦やマーガリン、白砂糖などの材料を一新し、北海道産小麦や北海道産バター、きび糖などに変えました。揚げ油や水にもこだわり、香りのない透明な太白ごま油と羊蹄山の湧き水を使用しています。
「時代も移り変わり、求められるものも日々変わってきている。自分もお客さんも納得できて、安心して食べられるパンを作ることにこだわっている」とパン作りにかける思いを話してくれました。
先代が残してくれたパン製造の設備をこれからも長く残していきたいと話す四釜さん。将来は、齋藤さんご夫婦がやっていたように学校給食用のパンを作りたいと考えているようです。
「おすすめはあげコッペパンです。注文を受けてから揚げるので、カリカリのあげコッペが楽しめますよ!」
齋藤さんご夫婦が掲載された広報ニセコはこちらから
(平成12年3月号 9ページ)
※本紙をご覧ください。
◆特製カレーの味を引き継ぐ「茶房ヌプリ」
JRニセコ駅内の喫茶店「茶房ヌプリ」。開業当時から変わらない看板メニューの「ヌプリ特製カレー」は、スパイスや素材にこだわる一方、たくさんの人が気軽に食べられるような味と価格のバランスを意識して開発。地元客をはじめ旅行客など、訪れる人の心をつかんできました。
開業から30年間ヌプリを営業してきた松田さんご夫婦。その後継ぎとして名乗りを上げたのは、近藤地区で農業とレストラン「チセガーデン」を営む平手原野さんでした。幼いころから松田さんご夫婦と深い親交があり、高校生の夏休みにはアルバイトをさせてもらったことも。ある時、松田さんから「ヌプリをやめる」という話を聞きます。
「たくさんの思い入れが詰まったヌプリが無くなるのはさみしい」と思い、冗談交じりで「僕がお店をやってみようかな」と言うと、「それが一番いいよ!」と第一声で言ってくれたことが引き継ぐ決め手となりました。
◇カレーの味を受け継ぐ
「看板メニューのカレーだけは変えずに続けてほしい」という松田さんの思いを引き継ぎ、半年間の修業の末、長年親しまれてきた味を継承している平手さん。
「子どもからお年寄りまでみんなが気軽に食べられるように、という思いで作られた特製カレー。その思いをしっかりと引き継いでやっていきたい」と話します。
しかし、そこには平手さんならではのアレンジも加わります。「僕は農家なので、自分で作った野菜をカレーのトッピングなどに使用していきたいです」
◇平手さんならではのオリジナリティも
お店の雰囲気は残しつつも、店内には少し変化が。
1つ目は、物販コーナー。平手さんが経営するレストラン「チセガーデン」の商品やオリジナルで作成した「ヌプリTシャツ」が販売されています。そこには「駅の近くでお土産を買えるところが少ないので、ちょっとしたニセコ土産を販売できたら」との思いがあります。
2つ目は、カフェドリンク。エスプレッソマシーンを導入し、本格的なカフェドリンクを楽しむことができます。
また、平手さんは現在ワイン用ブドウの栽培に挑戦しており、栽培3年目を迎えた今年が初収穫。「いつかは自分たちで作ったワインをヌプリで提供したい」と夢を語ってくれました。
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