◆家
上富良野高等学校長 森 雅義
子どもは日々、嬉しかった、悲しかった、悔しかったなど、さまざまな感情を抱えながら家に戻ってきます。時には意気揚々と、時には意気消沈している様子から外で何があったのかはだいたい想像できるのですが、家は、それを分かち合ったり、癒やしたり、考えたりする場でありたいと私は思っています。そのためには、戻ってくる子どもをどう迎えるかが大切です。先生に褒められた話をしたいのに、親が「忙しいから」と聞いてくれなかったり、何かが上手くいかず、傷ついて帰ってきたとき、いきなり小言で迎えられたりすると、その機会は遠のきます。何はともあれ「お帰り、今日は学校どうだった?」のような一言だけでも子どもは安心するものです。その心理的安定性のもと、夕食や入浴など、その後の時間帯を穏やかに過ごし、「こころ」と「からだ」の疲労を十分に回復させることが健全な成長には不可欠だと感じています。私が小学生の頃は、共働きで夕刻不在だった母が食事とともに時折残してくれた短い手紙がその役割を果たしてくれていたように思います。
現在、中2の息子は、部活動や少年団の練習で私より帰宅が遅くなることがよくあります。その息子を家で迎えるとき、これらのことを心掛けるようにしています。何か注意しなければならないときは少し時間を置いて「怒る」ではなく「諭す」意識で対話します。思わず感情的になり、怒りそうになったとき、息子が生まれた時のことを思い出すようにすると、自然と寛容的になり、落ち着いて話ができるから不思議です。子どもにとって「戻りたい」家であること、それを創ることが大人の役割だと思いながら日々を過ごしています。
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