■批判的な視点
健康保険証として利用する際の手続き誤りなどで世を騒がすマイナンバーカードの誤登録問題(別人の情報が紐付けられる等)。一部の報道機関は、来年秋に予定される現行の保険証の原則廃止を「立ち止まるべき」と声高に訴えます。
個人情報保護に関わる問題であり、一連の作業ミスは決して看過できるものではありません。ただ、報道内容をじっくり精査すると、彼らの論調も少し立ち止まって見つめ直すべき点があるように感じます。
保険証と一体化したマイナンバーカードは約6697万件(9月3日現在。全カード交付件数は約9518万件)。このうち誤登録件数は8441件(8月8日現在)で、全マイナ保険証に占める割合は0・013%です。ヒューマンエラー(人為的失敗)に関する研究によると、簡単な数字データの入力ですら1千回の作業で1回(0・1%)程度はミスを犯すとされ、データだけでの単純比較ではマイナ保険証に関する誤作業は低く抑えられていると言えます。
一連の報道は、交通事故の原因を自動車に求めて、その使用に待ったをかけているようなもの(ちなみに日本人の事故を起こす確率は0・4%)。この問題からの学びは、新聞記事等の報道といえども盲目的に信じず、色々な情報を集めて自分で判断する力を養う重要性。もちろん、このコラムも批判的に読んでいただいて構いません。
これからの時代、批判的な視点は大切な武器となります。今年上半期の特殊詐欺被害額は、過去最多の前年同期より40億7千万円(26%)増の193億円。その手口は悪質化し、高齢者以外にも被害が拡大しています。お金に絡む話を持ちかけられたら、まずは落ち着いて他者の意見を聞くこと。美しい村の村民であっても、時には斜に構えた姿勢が必要です。
健やかに人生を歩む秘けつは批判的な視点を持つことです
<この記事についてアンケートにご協力ください。>