■「人新生」の行く末
村の「経営者」である村長にとって、多様な情報の吸収は大切な仕事の一つ。今年上半期を振り返り、最も印象深かった話題はNHKスペシャル「ヒューマンエイジ人間の時代」。欲望のメカニズムに関する科学的分析は、示唆に富んだ内容でした。
食欲がなければ生命維持が難しいように「欲」は動物の生存に不可欠。そのため、欲を満たす行動への報酬として快感を得られるよう、動物は神経伝達物質「ドーパミン」を獲得しました。脳を高度に発達させた人間は、課題解決のような知的欲求に対してもドーパミンを分泌するようになりました。このことが社会活動の多様性や技術革新を生み、肉体的にひ弱な人間を地球上の食物連鎖の頂点に立たせました。
番組では、利便性と豊かさの追求という『課題』が、人間を際限のない欲望へと駆り立てたと指摘します。第二次世界大戦以降、科学技術を著しく発達させた人間は急激にその数を増やし、その社会活動に伴う大量の排出物質(化石燃料燃焼による炭化粒子、核実験によるプルトニウム、化学肥料、プラスチック微粒子等)が地表に堆積し始めました。生物が爆発的に多様化した古代の地層を「カンブリア紀」と呼ぶように、この新たな地層を人間の時代「人新生(じんしんせい)」として区分するか、議論が進められています。
一個体の負荷は大きくなくても、種族全体で多大な影響を地球に及ぼすようになった人間。逆に言えば、小さな力を集めて良い効果を与えることも可能です。私たちは地球に今起きていることを自分事ととらえ、人間特有の知的欲求を別方向(環境負荷低減)に向けねばなりません。「穏やかに生きる」。これ以上の幸せはないはずです。優しさを貴ぶ美しい村が先導したいものです。
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