こんにちは、病院の古武です。3月になりましたね。去年の4月に赴任してからほぼ1年が経ちました。厳しい冬も何とか乗り越えることができました。冬は静かで色々と物事を考えるにはいい季節だと思いました。今回は私の思う「よい医師のあり方」について書いてみたいと思います。
◆医学におけるサイエンスとアート
“Medicine is an art based on science”.
これはアメリカの著名な医師、ウィリアム・オスラー博士の言葉で、「医学はサイエンスに基づくアートである。」という意味です。医学におけるサイエンスとは身体や疾病を扱うものです。一方で、アートとしての医学は身体や疾病ではなく人の心を扱います。サイエンスである医学では分析と診断が重要ですが、アートとしての医学では患者さんとのコミュニケーションが大切になります。(下表)
◆医学の変遷
昔の医学は祈ったり、手を当ててなでたり、温めたりするようなものでした。それが近代医学の発展とともにサイエンスに向かうようになりました。つまり、病む人を対象にした癒やしのケアの医学から疾病を対象にし、治療効果や、命の質ではなくどれだけ延命できるかということに重点を置くものに変わってきたのです。現代の医学ではともすればアートの側面が忘れられがちなのかもしれません。サイエンスとアートのバランスが大事なんだと思います。(下図)
◆よき医師とは
先述のオスラー博士の弟子は、「経験豊かな医師は自分の言葉が患者にとって特別な意味をもち、大きな影響を与えるということをわきまえている。」と言っています。事実、私自身も日々の診療で自らの言葉が重大な影響を与えることをしばしば経験します。言葉をいかに上手に使い、患者さんとうまくコミュニケーションをとれるか、そこに医師のプロフェッショナリズムの1つがあるように思います。
私はもともと外科医でしたが、歴史上「優しい外科医」と評されているフランスの外科医パレは“To cure sometimes,to relieve often,to comfort always.”という言葉を残しています。「医者は治すといっても時々しか治していない。でも痛みや不安を和らげることはもっとできるし、心の支えになることはいつでもできる。」という意味です。中頓別の病院では高齢者の患者さんが多く、治す事ができない病態も多いです。サイエンスとアートのバランスを取りながら、過去の偉大な先輩医師たちを見習い、少しでも不安を和らげたり心の支えになれるように精進したいと思います。
参考文献:日野原重明.未来の医学の中の内科学の位置づけ.日本内科学会雑誌.第103号.第9号.2222-2227.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/9/103_2222/_pdf
諸般の事情により病院だよりは今月号で終了とさせていただきます。これまで読んでいただきありがとうございました。
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