■“まかれた種は豊に実りをつけねばならない”
9月で2期目も折り返しになります。定期的に町政のコラムを書かせていただいていますが、この間を振り返ってみたいと思います。冒頭の言葉は20年ぶりに刷新された、新5千円札の顔である津田梅子の言葉です。ご存じの通り津田梅子は当時では非常に珍しいアメリカ留学を経験し、日本女子教育の先駆けとして活躍しました。そして学んだ成果を次世代につなげて行くことの大切さを、冒頭の言葉で訴えました。
以前に書いたコラムで、「1年目には種をまき、2年目には水をやり、3年目には花を咲かせましょう」との言葉を引用させていただきました。これは、プロ野球監督の野村克也さんのチーム作りに関する言葉ですが、首長の仕事もまさに同様です。私の仕事は、町の将来を見据えた戦略を策定し、それを実行するための財源を確保し、外交で様々な方々と力をあわせ実現させていくことです。
自治体の政策は、ややもすれば近視眼的になりがちです。しかし、人口減少や少子高齢化といった社会構造の変化により厳しい未来が待ち受ける中で、我々の子や孫世代にきちんと豊かな実りを残していく、このことを第一に考え日々町政を執行しています。
■切れ目のない子育て支援
今年度から小中学校の給食費の無償化、0歳から2歳までの保育料の無償化(3歳以降は既に無償化になっている)を実施しています。また医療費は0歳から18歳まで無償にしていますし、希望者には小樽協会病院と連携して先進諸国では行われている胎児精密エコー検査が出来るようになっています。出産祝い金についても第一子、第二子にはそれぞれ5万円、第三子以降の出産には50万円を支給する施策を行っています。これに加えて、余市町に居住している30歳未満の若年層には、奨学金の返還を町で支援する事業も行っています。
■財源は?
これら施策を行うには勿論多くの財源が必要です。給食費の無償化には6,000万円ほど、保育料の無償化には1,500万円ほどが必要になってきます。この財源は、ふるさと納税で賄っています。ふるさと納税に関しては、就任時に5,800万円台だったものを15倍の約9億円まで伸ばしました。企業版ふるさと納税も1億円まで伸びてきています。ちなみに、余市町の予算(令和6年度は105億円)に占める町税は17.3億円と約16%です(全国平均は35%)ので、ふるさと納税は貴重な財源になっています。
■厳しい懐事情
役場スタッフの工夫と頑張りもあって、ふるさと納税を集めてはいますが、前述のとおり余市町は収入のほとんどを地方交付税他に依存しています。支出では少子高齢化の加速で、扶助費(高齢者等を支えるためのお金)が20年前に比べて5倍になり、また、公共施設等の老朽化でこのままでいくと維持・更新の経費が毎年約27億円近くかかってくると推計されていることから厳しい懐事情と言わざるを得ません。
しかし、国費等をうまく活用する手法を就任後から採用しており、その甲斐もあって、経常収支比率(100%に近いほど自由になるお金が少ない)は、私が就任前の平成30年度は決算ベースで101.0%だったのを令和4年度決算ベースで88.8%まで低下させることに成功しました。
町の財布をほぼ痛めずに計画を進めた例としては、いま道の駅の移転関係の調査を進めていますが、こちらに使った金額は約1億3,600万円です。これらは経済産業省と国土交通省の補助金で約80%を賄っています。また、野球場の改装に約1億2,700万円かかりますが、これもスポーツ振興くじ助成金で約60%を賄いました。これらの獲得については地元選出の中村裕之衆議院議員にも大変ご尽力いただいています。
■町長はいつもいない?
余市町を運営していくためのお金の確保はなかなか大変なのです。どうでしょう、私が毎日役場に行き、机に座っていればお金は増えるでしょうか?全くそんなことはありません。常に外に出て毎日数多くの方々と会い、応援団を増やすことが大切になってきます。と言うわけで、私は不在になりがちです。今までの町長とは異なる勤務のスタイルということもあり、しばしば町民の皆さんに「いつも町長はいない」とのお叱りを受けることがありますが、こういう事情なのです。とはいえ、常に副町長や幹部職員とは密に連絡をとりあっており、決裁も電子決裁になっているので、指揮命令系統が乱れたり、町政が停滞するということはありませんのでご安心ください。
■ワインしかやってない?
そして、もうひとつよく言われるのは、「ワインしかやってない」ということです。これについて、「一点突破」という手法であえて目立たせるようにしています。余市の知名度、注目度、どんどん高まってきてはいないでしょうか?旗印を立てて注目を集め、広く産業全体に果実が行き渡ることを狙っています。予算書では明らかですが、広く余市の産業を支援する事業に予算をつけていますので、この機会に私の戦略、お見知りおきください。
■町営斎場、道の駅、JR並行在来線
長年の懸案になっていた町営斎場の建て替え事業に関しては、梅川の現在の斎場から約350メートル南に位置する場所で新設するよう進めており、今年度に基本計画を策定し、令和8年度に建設を開始し、令和9年度中に完成して、供用を開始できる見込みです。多くの町民の皆さんにご心配、ご迷惑をかけている事を大変申し訳なく思っております。
また、道の駅に関しては、余市IC付近で新設する計画で事業体からの具体的な提案を待っている段階です。私として町にとって将来の負担になるような施設に大切なお金を投資するつもりはないので、提案を精査してやるか、やらないか判断したいと考えています。
JR並行在来線については、余市・小樽間について、利便性と迅速性が確保されるのであれば、バス転換に合意する旨、あえてマスコミがたくさんいる中で述べました。多くの方に合意の条件の証人になってもらうためです。ですので、この条件を守ってもらうよう、交渉を進めていく予定です。
■最後に
2期目も折り返しになり、多くの町民の皆様、議会や関係機関の方々の多大なるご指導、ご鞭撻に支えられていることを日々実感しています。心から感謝申し上げます。今後も町民の皆さんの声を町政に反映させるべく、様々なご意見、ご指導を賜りたいと存じますので、お気軽にお訪ねください。
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