■『ニセコとイワオ』1962年小川原脩画
倶知安から西の方角に望む、ニセコアンヌプリと北隣に並ぶイワオヌプリの姿そのままに描かれています。二つの山の頂付近の深い沢でしょうか、白い雪が見て取れます。上空に浮かぶ白い雲はずいぶんと優しい雰囲気です。森の木々は淡くくすんだ晩秋らしい色がおおらかに並んでいます。冬のはじまりの季節を写し取ったこの作品は、長年、持ち主に愛されていたそうです。
この作品の来歴を、ご紹介します。「ニセコとイワオ」は、かつて倶知安町で開業していた医師・石田夫妻が小川原脩本人より譲られ、石田医院に掛けられていました。やがて倶知安の病院を閉じ、札幌で診療所を開いた時にも、この作品は院内を彩ったそうです。小児科医であった暁子夫人は亡くなるまでこの絵を見て倶知安を懐かしんでいたとのこと。さらに暁子夫人から引き継いだ方とともに旭川へ移動します。描かれてから60年あまり。倶知安から北上を続けた本作は、今年の10月当館へ寄贈され、倶知安への里帰りを果たしました。
文:沼田絵美(小川原脩記念美術館副館長)
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