私がベトナムで日本語を教えていた頃は、学生とのやりとりの中でさまざまな文化の違いを発見しました。その中で印象に残っているものの一つに『犬の散歩』があります。
文法の授業で『運動不足にならないように毎日犬の散歩をしています』という例文を出しました。わかりやすい例文のつもりでしたが、学生は『ポカン』としているのです。
その学生は「他の例文の意味はわかるが、この例文のせいでよくわからない。どうして犬が散歩することが、人間の運動になるのか」と言うのです。これを聞いて、私はハッとさせられました。よく考えてみると、ベトナムで犬を散歩させている人はまれで、ベトナムで犬の散歩は、犬が勝手に1匹で行くか、もしくは犬は家の敷地内から全く出ないというのが普通だったのです。つまり、犬の散歩は人間と犬が一緒に行うという前提が、学生たちの頭の中には全くなかったのです。
町のにほんごサロンには、台湾・ミャンマー・マレーシアなど、他にもたくさんの国の人たちが参加しています。ここでも毎回、参加者とのやりとりの中で、面白い発見や新たな気付きがたくさんあります。日本語教育に関わっていると、これまでの感覚や常識が変わる瞬間が時々あります。私はこれが面白くて、日本語教育を続けているのだと思います。
※次のにほんごサロン「にこちゃん」のサポーターミーティングは12月です。詳しくは町HPをご確認ください
倶知安町地域おこし協力隊 佐藤礼乃隊員(総合政策課)
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