■『イワオヌプリ』1974年小川原脩画
倶知安の市街地から西の方角に目をやるとニセコアンヌプリの右側に独特な山容のイワオヌプリが見えます。6000年前まで活動していた火山で、今も登山口付近は硫黄の臭いがしています。長い年月をかけて自然が造りあげた形状は山麓に生きる人々のふるさとの山として親しまれています。
小川原脩は季節ごとに変化するこの山をよく画題にしています。この作品は紅葉の時期に制作されたのでしょう。明るい青で軽やかに塗られた空。色彩豊かな紅葉が広がる森にどっしりと重量感のあるイワオヌプリが印象的に描かれています。
緩やかな起伏と高低差のある斜面手前の森は緑が生い茂り、奥に見える森は赤や黄色の鮮やかな絵の具で紅葉する木々を表現しています。柔らかいタッチで表現された樹林とは対照的に、山は陰の部分と陽の当たる部分の明暗をくっきりと塗り分け、斜面の所々に見える鋭い線が山肌の荒々しさを表現しています。まもなく訪れる冬を前に、山と森が見せる色彩のショーを一瞬で捉えたふるさとの風景です。
文:金澤逸子(小川原脩記念美術館学芸スタッフ)
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