今年の7月に最高裁判所は、特定の疾病や障害を有する者などを対象とする旧優生保護法の不妊手術に関する規定は「個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するもの」であり、差別的であるから、憲法第13条および第14条第1項に違反するとの判断を下しました。
旧優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げて1948年に制定されました。そして、優生思想に基づき、1996年に母体保護法に改正されるまでの間、障害のある人に対して、不妊手術が約2万5000件、人工妊娠中絶が約5万9000件、合計約8万4000件もの手術が実施されました。最高裁は、国は、「約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の障害等を有する者等を差別してこれらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきたもので…(国の)責任は極めて重大」としました。
最高裁は、旧優生保護法は、立法当初から憲法違反であったと判断したものです。
この判決では、草野耕一判事が次のような補足意見を述べています。
「本件において注目すべきことは、本件規定の違憲性は明白であるにもかかわらず、本件規定を含む優生保護法が衆・参両院ともに全会一致の決議によって成立しているという事実」、「これは立憲国家たる我が国にとって由々しき事態である」、「違憲であることが明白な国家の行為であっても、異なる時代や環境の下では誰もが合憲と信じて疑わないことがあることを示唆している」。
これは私たち主権者一人一人にも向けられた言葉と感じます。多数決によって決められた中に、個人の尊厳や法の下の平等が傷つけられていないか、常に考えなければなりません。
ようてい法律事務所弁護士 渡邉恵介
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