■『群れ』1990年小川原脩画(武内コレクション)
当館の所蔵作品は大きく二つのコレクションに分かれています。一つは、もちろん「小川原脩コレクション」、画家自身が手元に残していた作品群を収蔵したものです。
もう一つが「武内コレクション」と呼ばれるものです。こちらは故・武内一男氏が個人のコレクションとして蒐集(しゅうしゅう)した美術作品103点で構成されています。好きな作品を蒐集したコレクションは、自宅や居間などのプライベート空間をさり気なく彩り、生活に潤いを与えてくれるものです。選ぶ人の好み、考え方、人格までもが反映されると言ってよいでしょう。
今回ご紹介する本作も、武内コレクションからの1点です。1990年、小川原脩が79歳の時に描いたもの。1986年に訪れたインドの印象を、すがすがしい色彩で表現しています。まるい樹形、無数の鳥。頭に荷を乗せて運ぶ人々には異国の雰囲気が漂います。穏やかだけれども、程よいにぎやかさもあり、心地よい魅力的な作品として、武内コレクションに加わったのだと思います。
文:沼田絵美(小川原脩記念美術館副館長)
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