■『造園地帯』1938年小川原脩画
今から100年前シュルレアリスムはフランスで生まれました。シュルレアリスム絵画は人が夢や無意識の中に抱えている世界観を強調して表現するというものです。
日本にシュルレアリスムを展開した第一人者が福沢一郎でした。福沢の作品は今までにない表現で若い画家たちに大きな影響を与えましたが、当時の美術学校や官展のアカデミズムにシュルレアリスムは認められませんでした。シュルレアリスムの様式に傾倒していた小川原脩は反抗する意思表示として福沢を訪ねたのです。福沢は「エコール・ド・東京」の結成に参加することを勧め、発会式が済んでから入会した小川原はそこでの展覧会に出品したり、個展を開催したりするなど前衛画家のひとりとして活躍しました。
この作品は銀座ギャラリーの個展で展示されたうちの一枚です。ターコイズブルーの明るい空と広がる大地に、白く細長い建造物が描かれています。「知らない空間で自分だけの庭を造りたい」。小川原がオリジナルな絵画スタイルへの再出発としたシュルレアリスムでしたが1937年に日中戦争が始まり、シュルレアリスムは危険思想と疑われ自由な創作活動をするのが困難になっていきました。
文:金澤逸子(小川原脩記念美術館学芸スタッフ)
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