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感動の場―点

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北海道倶知安町

■『無題』1978年小川原脩画
少し離れた場所からじっとこちらを見ているエゾシカと、北国の大地に根を張る白い樹が描かれた作品です。節くれ立つ手のような形状の枝が、風雪に耐え曲がりながら上へと伸び強い生命力を感じます。白い樹の奥には多くの野生動物が生息する森が広がり、うっそうとした原生林に生きる動物たちの気配が伝わってくるようです。
小川原脩は1970年代、馬・白鳥・犬をモチーフにして社会への反抗や孤独感、悲哀の情感を表現した作品を多く描いています。
エゾシカをモチーフにした作品の数は少なかったようですが、画面に描かれたエゾシカの静かな佇まいと穏やかな姿態は、北国で共に生きる動物を思いやる小川原の心情そのものかもしれません。エゾシカは北海道の開拓が始まってから、乱獲や生息地の破壊により絶滅寸前にまで数を減らしましたが、禁猟や駆除を繰り返し、1990年には個体数が劇的に増加しました。今では倶知安町でもエゾシカの生息数が増え、事故や食害の問題になっています。目の前に突然エゾシカが現れたら穏やかな気持ちではいられませんが、人間の生活圏に足を踏み入れたシカも同じように驚き戸惑っているように思えるのです。
文:金澤逸子(小川原脩記念美術館学芸スタッフ)

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