■タッピングナイフ 502回
本紙写真の資料は、厚手の包丁の先に太い鈎(かぎ)が付いている「タッピングナイフ」と呼ばれる特殊な農具で、ビート(甜菜(てんさい))を収穫する時に使用されるものです。
大きさは全長が42センチで、刃の長さが26センチ、刃の幅が6センチ、刃の背厚が2ミリになり、刃の先には、長さ13センチで先端をとがらせ手元側に曲げた鈎が付いています。この鈎は、刃の先端部分を細長く切り抜き、鈎の後ろに切れ込みを入れ差し込むように装着し、鈎の頭にねじ山を付けてボルトで締めています。そして刃の左側には、これを製造したお店の屋号が刻印されています。
昔のビートの収穫は、馬やトラクターで掘り起こしたビートを、このタッピングナイフの鈎を突き刺して持ち上げ、包丁部分でビートの茎葉を切り落として収穫しました。
現在は機械がメインで、トラクターに取り付けた器具を使ってビートの茎葉を切り落とした後、ビートハーベスタという機械でビートを掘り起こし、土や泥を落として収穫していますが、タッピングナイフは農業機械で収穫できない畑の隅や、積み上げられたビートの山を整える時などに使われています。実は現在でも販売されている農具で、ビートを栽培する農家では大切な農具の一つです。
文:今井真司(倶知安風土館学芸補助員)
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