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感動の場―点

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北海道倶知安町

■『水牛のいる風景』1980年小川原脩画
小川原脩が初めて中国を訪れたのは1944(昭和19)年、日本が太平洋戦争での戦局において不利な状況になった頃でした。従軍画家として中国大陸を歩いた時、桂林(けいりん)に行きたいという思いがあったそうですが、武漢(ぶかん)、岳陽(がくよう)、長沙(ちょうさ)、そして衡陽(こうよう)へと前線を追うようにして進んだものの衡陽から引き返すことになりました。
桂林を訪れることができたのはそれから35年後のことでした。「広州(こうしゅう)・桂林友好訪中団」のツアーに参加した小川原でしたが、戦争に翻弄(ほんろう)された時代を生きた人間にとって、中国への旅は心躍るだけのものではなかったことでしょう。桂林での滞在中、小川原はスケッチブックに風景や動物、街の様子を描き留め、帰国後は、それらをモチーフにしてキャンバスに再構成することで当地の情景を表現しました。
この作品は、のどかな耕作地でしょうか。薄い青や赤を混ぜた温かみのある背景にふんわり茂った樹木の葉が描かれ、樹の下には今にものそりと動きそうな牛たちが並んでいます。かつて戦地の状況を記録するために渡った中国でしたが、この作品からは平穏な日常が感じられます。この旅をきっかけに、その後の小川原作品は大きく変化していくのでした。
文:金澤逸子(小川原脩記念美術館学芸スタッフ)

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