診療所長 浦本幸彦
■わかっちゃいるけど
僕の職場は患者さんに何か症状があると最初に訪れる場所です。そして何事かあれば大きな病院(後方支援病院)へ紹介し検査や治療を受けてもらいます。一件落着すれば戻ってくる場合が殆どです。そして経過を診ていきます。そう考えると長いお付き合いが必要になります。
毎度毎度大事件が起こる訳ではないのでのんびりしたものです。慢性疾患の治療が中心で生活指導も毎回です。 厚労省が決めた生活習慣病と言えば高血圧症、糖尿病、脂質異常症で食事療法や運動療法の指導をします。
まあでも、僕がしゃべることは患者さんもご存知の事なんですよね。やるべきことはわかっているんですよね。こちらとしても、食事管理や運動療法の完璧な遂行までは望みません。
食事制限が必要な方への説明では食べたいな~という欲望の抑制に関し十戦十勝は無理しちゃうから十のうち六勝七勝で万々歳だよと説明します。誘惑に負けて食べ過ぎた時は翌日に少し減らせば大丈夫だよとも言います。長く続けなければいけない生活習慣の改善ですからなるべく無理なく変化をもたらしてほしいです。
頑張って自己改革を進めようと努力する方はいます。
その一方「わかっちゃいるけど派」の方もいます。
自分の健康管理ですから自己責任で自由に振舞うのは法律にも倫理にも触れません。
「わかっちゃいるけど派」の考えを分析してみました。
好きなものを好きなだけ食べて幸せで何が悪い。面倒でつらい運動なんて何故しなくちゃいけない。ちょっとくらい食べてもすぐには実害ないよ。運動しなくても今は困らないよ。本当に必要だと思ったら食事制限もするし運動もやるよ。その時が来たら。
てな感じかなと想像しました。
「わかっちゃいるけど派」の人は何が正しいかご存知です。でも実践はまだしていない。
百歩譲って自己管理の不出来は良しとしましょう。他に迷惑は掛かりません。
心配しているのはその他の事にも「わかっちゃいるけど」が蔓延していないかです。
社会的に人が持っておかねばならない所謂「良心」や「善行」などに関してです。
何を正しいと理解し他人に対しどう接するかは皆教育を受けてご存知の事でしょう。
食事療法や運動療法も「わかっちゃいるけど」では困るのですが日々の心の持ちよう、一日の行いも、「わかっちゃいるけど」で済ませていると、少し怖い気がします。
「モラルハザード」と言う言葉を思い出します。倫理観の欠如や責任感の不在の事です。平和で穏やかな時代なので、ついつい油断して緩みっぱなしになっていませんか?
植木等さんの名言「わかっちゃいるけど」は使い過ぎに注意しましょ。
明石家さんまさんは「お笑いは緊張と緩和や」と言っていました。「幸せも緊張と緩和」が必要なのではと考えています。
◆北竜町立診療所
休診日のお知らせ
10月16日(水)は午後1時30分より、浦本先生が深川市において介護認定審査会に出席のため、午後より休診となります。
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