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小さな本屋のひそひそ話 第2話

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北海道大樹町

■なぜ移動書店なのか?
さまざまな場所で出店をしているとお客さんから「普段はどこにお店があるんですか」とよく聞かれます。「実店舗はなくて、移動販売というスタイルで本屋さんをしているんですよ」というと驚かれる方もいるのですが、私にとってこのスタイルはあたりまえの選択でした。
大樹町に着任する前は、ブックディレクターの幅允孝(はばよしたか)が代表を務める会社に勤めて「本のある空間づくり…ブックディレクション」を仕事にしていた私。病院や飲食店、企業ライブラリーに百貨店、面白いところだと動物園や魚屋さんなど、その場所に合う本を選書して効果的なディスプレイを施すといった仕事でした。
代表の幅がいつも言っていたのが「人が本屋に来ないのならば、人がいる場所へ本を持っていこう」ということでした。世の中がますます便利になり、娯楽の多様化が進む昨今、読書に割く時間を作ることがいかに難しいかは私も実感しているところです。そもそも、人は本に興味がなければ本屋さんや図書館には行きません。たとえ本屋さんに行ったとしても、あれだけ膨大にある本の中からどうやって読みたい一冊を見つけるのでしょうか。それを解決するのが移動書店という形態でした。
今でこそ、弊店を目掛けて足を運んでくれるお客さんもいますが、お店の一角をお借りするなどして出店をすれば、偶然その場に居合わせて弊店の本を選んでくれる方も多く、そんなときに一番の喜びを感じます。
また、私が一度の出店で持っていく本の冊数は、多くても100タイトル程度。「おすすめは何ですか」と聞かれたら、「全部です」とお答えしています。ただ店頭に並ぶ本については全て内容を把握しているので、どんな本かを口頭でご説明し、その上で買ってくださるお客さんもいます。普通の本屋さんでは、よほど店員と仲良くならないとできないことでしょう。私もお客さんとの会話の時間を一番大事にしています。
いつか、実店舗を構える日が来るのかは私にも分かりません。しばらくは、その日その時間にその場所で出会えるお客さんとのつながりを大事に、いろいろなところに出没したいと思っています。

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